Sari

ファスビンダーのケレルのSariのレビュー・感想・評価

ファスビンダーのケレル(1982年製作の映画)
3.0
2021/09/21 Amazon Prime Video

ジャン・ジュネの小説「ブレストの乱暴者」が原作。
『ヴェロニカ・フォスのあこがれ』と同年製作にして事実上のファスビンダーの遺作。

舞台は第二次世界大戦直前。
港の淫売宿ラ・フェリアの主人ノノは、ダイスを賭けにして男を犯すのが趣味と噂される男。ノノが黙認している妻リジアヌとロベールの愛人関係を始め、アヘンの取引に宿にやってきた、若く魅力的なロベールの実弟ケレルの登場を機に、男同士の愛、裏切り、死が交錯していく。

オレンジ色の夕景に照らされた様式化した建物のセットが印象的。水兵の男たちが集う船、建物の角に一体化して聳え立つ男根のシンボル、筋骨隆々で男漁りが趣味というハードゲイの警官など、卑猥な男色の世界を、汗ばみむせ返るほどの官能と退廃で描く。

戯曲から引用されているであろう劇台詞と、単純なセットから舞台劇のようでもあるが、ファスビンダーの才気が十分に感じられる作品である。

紅一点のマダム、リジアヌを演じたジャンヌ・モローの枯れた妖艶さが素晴らしい。
彼女が冒頭と最後に歌う同じ曲の同じフレーズのリフレインは、空っぽで満たされない心を物語る。
フィルターがかった映像で、モローの衣装のスパンコールが照明の角度によって煌びやかに輝きを放ち、ケレルとリジアヌの二人を撮らえたカメラの視点が、何度も鏡越しに切り替わったり、カメラワークとライティングの拘りが感じられた。
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