社会のダストダス

カラオケ行こ!の社会のダストダスのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
3.9
… ♬~前奏~

すぅー…(息を吸い込んで)





紅だああああああああああ!!!!!!!!!!!



綾野Go!とカラオケへGo!する映画、これが今年の劇場鑑賞初めになる。

歌がどうしても上手くなりたいヤクザと、変声期に悩む合唱部の中学生の可愛い友情物語。組のカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける恐怖を回避するため、ヤクザの成田狂児(綾野Go)は合唱部の中学生 聡実君に歌のレッスンを頼み込む。

優しい世界。思っていたほど笑うような映画でもなかったけど、ちょうどいい感じの余韻が残る爽やかな青春(?)映画。たまたま狂児さんが話しかけた相手が聡実君だったから良かったけど、中川さんや和田君だったら絵面的に綾野剛といえども犯罪度数がかなり高くなっただろう。

ここ数年の綾野剛さんはヤクザでも公務員でも怖い人の役を見たけど、今回は普通に良い人すぎる。こんな反社なら街に一人くらいいてもいい気がしてくるが、本作の綾野剛さんに『ヤクザと家族』の「ねえ、なんでヤクザなんてやってるの?」って質問をぶつけてみたい。

自分より歌が下手だったタンポポ(元ハイエナ)の兄貴が音楽教室に通い始めるという裏切り行為に遭い、狂児さんは今年こそ自分が歌ヘタ王になってしまうのではないかという焦りにかられなりふり構わず、立ち寄った合唱コンクールで偶然見かけた合唱部部長の聡実君に助けを乞う。歌ヘタ王になってしまうと組長直筆のダサい刺青を彫られてしまうということで悲壮な覚悟が伝わってくる。

聡実君は当然ヤクザなんて怖いので当たり障りのないことを言って距離を置こうとするが、中学生のダメ出しでプライドをズタズタにされながらも真剣にレッスンに取り組む狂児さんに心動かされていく。狂児さんに合う曲は何か?とだんだんと聡実君の指導にも熱が入っていくのが面白い。聡実君自身は声変わりに悩み合唱部の活動を欠席しがちになっていて、彼にとっては現実逃避でもあるが、狂児さんの姿勢から純粋に音楽を楽しむことを思い返しているのかもしれない。

ヤクザを過剰に美化してるわけでも無くて、狂児さんの車のダッシュボードから恐ろしいものが出てきたり、界隈で絡まれたり、聡実君のヤクザより無情なダメ出しに怒っちゃう人もいたりと、ヤ―さんたちの危ない面もある程度描かれているのが良かった。それにしてもタンポポの兄貴は選曲がももクロというのが謎の強敵感が出ていた。

山下監督の前作『1秒先の彼』は結構好きだったので今回も満足。聡実君のフリーザ様みたいな怒り方も良かった。