あまりに良すぎて観賞後ずっと気が狂ったようにこの作品のことを考えてしまっている。
天邪鬼が故 和山やまさんの作品は絶対に自分のツボだろうと分かっていて敢えて避けてきたが、口コミの良さに負けて結局鑑賞、放心状態のまま原作を読むべく書店に駆け込むことになってしまった。
主演の齋藤潤さんはまさに変声期という奇跡のタイミングで聡実くんを演じられたようで、二度とない人生の貴重な瞬間をこの映画に、そして「紅」に込めてくれたことにまず感謝したい。
そしてその年齢だからこそ感じられる絶妙な青い感情の揺らぎや不安定さを純な姿でリアルに表現されていて大変心地よかった。
そして何より綾野剛。
遅効性の毒とはまさに彼のことであると言いたい。
観賞後、じわりじわりと彼の演じた圧倒的な解像度と説得力を誇る狂児が脳内に染み込んでくる。
漫画の実写化でキャラクターとビジュアルが一致してないのはどうなのよと思っていた人たち、皆彼にひれ伏していると思う。
それほどまでにあれは成田狂児そのものだった。
演者はもちろんのこと脚本や演出の力も素晴らしいもので、原作の空気感や間、そのうしろにあるメッセージを映像として表現するのは相当な理解が必要だろうに、オリジナルのパートに至るまで完全に計算しつくされたものになっていた。
どう考えてもすべてが愛によって生まれたものだった。
基本邦画に1800円を出す価値を見出だせず舐め腐った態度を取っているこの自分が久々にfilmarksを開き、あり得ないほどの熱量をもってこんな気持ちの悪い文章を残してしまう作品などそうそうない。
なのでどうか見てほしい。
そうしたらあわよくばファミレスでまた彼らに会えるなんてこともあり得るかもしれないので。