特に映画好きじゃない人になにか一作勧めるとしたら最適な作品だと思う。笑えて泣ける秀作。間口は広く、終盤にいくほど深みがある。
作品中心にあるのは物語というより、二人の付かず離れずな関係性の醸し出す空気感。それが本作の成功の要因なんじゃないかと思う。主人公に葛藤はあれどさほど強調されないし、行動には感情的な動機が薄い。そのぶん会話や関係性に焦点があたっている。
個人的にはやや退屈さを抱えながら見ていたものの、だからこそ終盤の展開にはグッとこさせられた。一点突破的と言っていいくらいエモーションを集中させたあのシーン。これまでの展開は全てここに結実させるためにあったんだと思える。演じる彼自身の身体的特性もあって、生々しいエモさがある。
最終的には、前向きながらちょっぴり切ない余韻が残る鑑賞後感。話のたたみ方がとても上手。ファンタジーからリアルへ、子どもから大人へ。何かが終わりまた何かが始まる。作品の作り上がり自体が、テーマを象徴していて巧みだと思う。
