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マチルダ・ザ・ミュージカルのmizukiのレビュー・感想・評価

4.7
なんて美しいこらしめ方…。昔の『マチルダ』は別にすごく面白かったというわけではなかったし、ミュージカルもそこまで好きというわけではないから期待していなかったけど、やられた。

こいつ悪人だ、と思ったら、思っているだけでは済ませられないよね。自分が何かされた場合も、自分ではない誰かに何かしていた場合も、ほっとけない。ブチ切れだよな…。優しい人=怒らないなんて絶対思わない。自分や大事な人を守ろうとするほど、許せない事が出てくる。誰に対しても怒らないなんて、何も大事にしていないだけだろ。怒りをエネルギーに能力を発揮するというのがめちゃくちゃ納得だし自然。
でも「こいつが悪い」って思うのは限りなく自分の主観だから、裁くのは自分一人の手でやらなければならない。正義は誰かと目配せをして示し合うものではない。担任の先生や図書館の人のように支持者はいるとしても、共謀してはいけない。そして、やり返すことはタブー。もっと頭を使って、その人に一番ショックを与える方法を。誰が裁いたかわからない方法を。自分が何か危害を加えるわけではなく、少々の因果に関与して、ばちが当たるその過程を見届けることが、裁くことだと思う。
個人的な正義感が根拠の復讐だということをわきまえていることと、最初から最後まで一人で戦うこと、戦った結果に人がつく(一緒に戦う仲間は集めない)ところがとても良かった。

先生が「一緒に暮らそう」と言ってくれたその時、父が初めて自分を「娘」と呼んだことに揺らぎかけ、でも先生を選ぶシーンを作った人は天才。そうだよ、そうなんだよ…。どんなに最低な親でもたった一つの言動で揺らがせてくると思う。だって親だから。
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