Masato

ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界のMasatoのレビュー・感想・評価

3.5

ディズニーアニメーションによるディズニーアニメ最新作。注目度が低いうえに全くもって宣伝されていないだけあって、そこらの映画よりも知名度が無い珍しいディズニー映画。

映画としては王道のファンタジー・アドベンチャーで、三世代のそれぞれのドラマを描きつつ環境問題にも切り込んだテーマ性をファミリー映画の楽しさに落とし込めているのは流石ディズニーだった。ファミリー映画ならではの浅さとベタさではあるが、クオリティは見事。

タイトルのデザインからして、インディージョーンズ感が丸出しで、冒険家の祖父と息子、孫を描いた作品なので必然的にそれが彷彿とさせる。カッティングや音楽などのディティールの面においてもスターウォーズ感があり、スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、ジョン・ウィリアムスなどの名作家たちへのリスペクトは感じられた。

物語もザッツ王道。家族連れで見に来ることを想定しての三世代のストーリー。親は子にどんな人間になってほしいか。本人はどのような人間になりたいのか。希望と願いと葛藤の物語。ベタではあるが。

それよりも、環境問題へのテーマ性とその表現方法が素晴らしかった。この地上ある世界は生きている。その"生き物"が作り出した資源に対して人類はどう向き合っていくか。自然を奪って生まれた利便性は果たして大切なのか?という強めなメッセージ。自然や天然資源は命の一部であるということを分かりやすく教えてくれる。自然を奪うだけ奪ってどんどん崩壊が進んでいく現実だからこそ、このサステナビリティ(持続可能な社会)を見つめていくテーマ性はタイムリーで良かった。

そうしたテーマ性がこの奇妙な世界、ストレンジワールドの世界観とリンクしてくる。この設定の巧さとユニークさ、デザイン性の高さはディズニークオリティ。子どもにも環境問題の構造が非常に分かりやすく、この映画を見たら少しでもこの地球を大切にしようと思える。その説教臭くない自然かつ丁寧な比喩とストーリーテリングが良いね。


追記
ディズニーの多様性の件でSNSが荒れてたらしいのでちょっと言う。もう白人やら黒人やらラテン系やらゲイやらはもう当然なので何も言わなかったんだけど、未だにそんなんで騒いでる右と無学がいるからね。

本作は全世代に見やすいように工夫されてはいるものの、本来は子どもたちがターゲットで、もう古臭い大人たちの凝り固まった考えは眼中にないのよ。私達はその時代に生きてるから良くも悪くも違和感を覚えることもあるし、それはしょうがない。でもこれから生きていく子どもたちには、それがおかしい、違和感と思わせなたくない。もうこの映画は「これから」をメタ的にも描いた映画なのよ。そこに文句言うなら見なくていい。
Masato

Masato