都部

ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界の都部のレビュー・感想・評価

2.9
可もなく不可もなくの物語というのが率直な感想で、息子の同性愛やマッチョイズムの緩やかな肯定/否定は事更に取り上げられる事がないのでさして気にならないものの、魅力に乏しい世界観と物語構造は二時間映画の主題として観客子興味関心を持続させるに足らないものである。

冒険家としての本懐を優先する父とあくまで文明発展の糸口の確保の為に冒険をしている息子という対立構図が冒頭から提示され、その結果として独自のエネルギー源を得て発展した世界観が展開されるが、まずこの基盤となる世界観の説明が微小であるから作品の危機としてある環境問題の深刻味をさして感じられないというのが挙げられる。

閉塞感を覚える世界観の展開は物語の真相を思えば納得だが、この真相から逆算して構築されたような文化圏は衰退するに当然の姿形をしていて現実的とは言えず、脚本に追従するような仕立てを感じる舞台設定は滑稽と思えて仕方がない。また特定のテクノロジーに依存する社会に対する批判の構図を成立させる為にあえて選択肢を限っているようにしか思えないため、作中の問題の構図が先行して最低限の整合性を失している。

三世代の語り部の交流は一定の愉快さを作品に齎しているが、冒険家/農家と異なる職種の重要性を説くばかりで、世代間による価値観の隔たりの葛藤などが挟まれなかったのは物足りない。孫の同性愛に対する指摘が成されない──現実のそれより普遍的な愛の形として置かれていると描写から理解出来る──のはまあまだ分かるとして、職業意識に振り回された言動ばかりが目立つ方が問題で、人間の性格の指向性を決定付けるのは先天的な職業の資質だとでも言うかのような扱い方が余程ヤバいよ!

とはいえ冒険を通した父と子の価値観の融和に関しては丁寧に描写の数を割いており、冒険活劇としての一定水準は満たしているが、作品としての強味や独自性には欠けるので無味無臭性が強く印象にも残り難い作品である。
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