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ファルコン・レイクのもちのネタバレレビュー・内容・結末

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

自分の記憶に残したい作品だったので書いておく。

森の中の湖という閉鎖的な場所。

水の音がやけに生々しく後頭部がゾワッとする。
水辺というのは景色としては綺麗だが、泳げない人間にとっては危険で恐ろしい場所でもある。

自分の魅力に無自覚で自信のない16才のクロエ。
子どもではないけど大人にもなりたくない。
幽霊の話を好み、溺死に憧れている。
自分の手を血が出るまで噛むチャレンジには意欲的だが、初体験で血が出るのはキモいと言う。

バスティアンは、端正な顔立ちのせいか捉えどころのない少年に見えた。
雑なところもあるけれど、歳の離れた弟の面倒をみる真面目な子(ポテチを持って逃げるティティを追うシーンは可愛すぎて心が震えた)。
「飲まなくてもいい」と言って一本の缶ジュースをまだよそよそしいクロエの側に置いたのも、頭の中で何度かシミュレーションした結果だろう。

英語とフランス語が飛び交う中、バスティアンはハイティーンのノリに馴染もうと精一杯背伸びする。
クロエを異性として意識し始めてからは、サッカーやダンスで間接的にアピール。
嫌がっていた女の子用の自転車を乗り回しクロエとサイクリング(草原で戯れ合う二人が眩しすぎる)。
おそらく人間関係で傷ついた彼女のために猛ダッシュでアイスを取りに行き、彼なりに励まそうとする。

自らの思春期を懐古しつつ、この映画がどうか幸せな甘酸っぱいエピソードだけで終わって欲しいという気持ちになった頃、事態は一変。

オリヴァーからのメールを見たクロエはバスティアンにひとこと「ウソつき」とだけ吐き捨てて全てをおしまいにしてしまう。何も言えないバスティアン。

ぽっと出のオリヴァーがいつの間にか彼女の信頼を得ていたことにも驚いたが、スマホを持つ19才と持たない13才では前者が圧倒的に有利だろう。
もしかするとジャンベの腕前も加点要素だったかもしれない。

夜の湖でクロエがオリヴァーと何度もキスするのを見て愕然とするバスティアン。嫌な予感が確信に変わる。
オリヴァーを遠ざけようとついた嘘が彼とクロエを近づけることになってしまうとは。

クロエにしたら許せない裏切りだったので仕方ないが、13才の少年には厳しすぎる展開。

人間社会では一度でもミスをすると元のポジションに戻るのが難しい。
それでもやり直すことはできる。
生きてさえいれば。

ラストで桟橋に座るクロエはまた一人ぼっち。
姿が見えず声が届かなくとも、せめて存在を感じることができたらと願わずにいられなかった。

パーティーのダンスシーンで使われてた曲(PL & WheelieのKILLA)の歌詞にPokémon 、Pickachuとあった。
フランス人のセンスよくわからないけど好き。
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