アンナ

バーバリアンのアンナのレビュー・感想・評価

バーバリアン(2022年製作の映画)
3.7
最初かなり長く不穏なシーンが続く。特に女性にとっては肩身が狭く、疑い深く、不穏さを感じるまた別の怖さがかなりリアルに描かれていてずーっとハラハラさせられる。
キースが味方なのか敵なのかもわからない状態で、中盤からいよいよ本格化するホラーシーン。

でもいざ「なにか」が出てきてしまった瞬間、あーこういうタイプね、とちょっと拍子抜けというか白々しい気分になった途端に始まる第二パート、第三パートへの移行は映画体験として斬新だった。

ホラー映画あるあるの不穏な雰囲気を抜けていざ直接対決、というか何かわからなかった恐怖の対象が描写されることでちょっと鼻白んだ気分になるあの現象が一度リセットされることで、また新鮮に楽しめる。
この構成意外と初めてかもなあと思い高評価。

パートごとに恐怖シーンが最高潮に達し、そしてまた次のパートへ…とシチュエーションや主人公が入れ替わることで、常に新鮮な気持ちでストーリーを追えるし、違う人物視点から少しずつ謎が解き明かされるのも飽きずに興味を惹かれて良い。過剰すぎない必要最低限のミニマルグロシーンも意外と斬新だし、(多分あえてだと思うが)核テーマでありながら女への性暴力シーンを排除してるのも誠実さを感じる。

あとデトロイトの警察クソすぎるのと主人公の勇気がありすぎる笑

好き勝手弄ばれたり強姦された女の悲しみと恨み、何の罪もないのに男のいいように使われる女、そして何の罪もないのに罪のある男のせいで疑われたり、傷つけられたりする被害を被る男。その全ての元凶にある、奔放に女を傷つけ、正当化して責任も取ろうとしない男の罪とどうしようもなさは意識的に描かれてたな。ホラーの皮被ったフェミニズム映画。
昨今の映画周辺での性暴力事件に端を発しつつ、普遍的な問題まで落とし込みきちんとホラーとしてのエンタメ性も保っている、良い映画。ちゃんと怖かったし、ラストも奥行きがあってかなり当たりだった。
アンナ

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