アンナ

こちらあみ子のアンナのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
4.2
原作読了済みですごく好きな作品なので逆に視聴をためらっていたが、結論としては非常に良かった。原作の空気感、メッセージ性がとても大切にされ映像として再構築されている。音の使い方が印象的だった。

あみこは彼女の特性から、ネグレクトやいじめに近い状況にいて、正論を言うならもっと親や先生など周りの大人が正しいサポートを…とか、いじめてはいけません、きちんとした支援を…とかの教訓じみたおためごかしはなく、まあもっと映画的に言うならば「こんな変わった子も優しさを持っていて、変だし大変だけど純粋だよね」みたいな受け入れやすい帰着点を作らないところが本当に良かった。

あみこ自身も、別に何も感じていなかったり考えていないわけではない。ただそれがこの世界の秩序や了解からことごとく外れていて、どうしようもなく人の神経を逆撫でする。

でも周りの人間も彼女を大切に思っていないわけではない。我慢して我慢して、それでもやはり我慢できないこともある。一方で愛おしさや助けてあげたいという気持ちもある。ずっと寄り添うことは無理かもしれないし、それは本当の優しさではないと言う人もいるだろうが、自分が助けられる時は助ける、無理なことは無理だったりする、そういうことの繰り返しで、わたしたちはギリギリ成り立っているのかもしれない。

あみこのような振る舞いや言動に対する一般的に感じうる生理的な嫌悪感と、他者からの拒絶をこれでもかというくらい容赦なく描き出しながら、けれど人々の奥底にある愛情も同時に表現する、というとてつもなく難しいことをやっている映画だと思う。
大好き、もう一度でも二度でも観たい。
アンナ

アンナ