Yoshishun

ブロンドのYoshishunのレビュー・感想・評価

ブロンド(2022年製作の映画)
2.3
“大炎上以前の問題”

故人の性的搾取、アナ・デ・アルマス以外見所なし、過剰なまでに性的暴行に特化したフィクション等など、配信開始と同時にネトフリ映画史上最大ともいえる大炎上を巻き起こしたフィクション映画。
そう、本作の扱いとしては、伝記映画というよりも、事実とフィクションを織り交ぜた嘘のマリリン・モンローの物語である。
モンローへの冒涜という批判はごもっともでありながら、暗黒のハリウッド舞台裏を歩んだ名女優の現実と夢に翻弄される暗黒フィクションといえる。

しかし、本作はそんなマリリン・モンローに対する侮辱に纏わる大炎上以前に、1つのオリジナル作品として全く面白いとはいえない代物である。

まず、本作は167分という長尺ながら、そこまで引っ張るほどの内容ではない。マリリン・モンローに対して次々に降りかかる不幸を繋いだだけにすぎず、その一つ一つを無駄にじっくりと見せつける。表現に工夫が凝らされているのであれば気にならないのだが、不自然に画面をボカしたり、波打つような映像にしたり、はたまた定点で一部始終を映し出すという面白味もないカメラワークが連続する。ましてや本作はハッピーエンドでもなければ、劇中ずっと不幸続き。観ていて気持のいいものではない、かつ面白くもない映像を延々と見せられるのは最早苦行である。また、流産してしまうというショッキングなシーンも似たような構図が何度も使われ、凡庸な印象しか受けない。

また、ノーマ・ジーンとマリリン・モンローとの移り変わりを示す手法として、ノーマの場合はカラー、モンローの場合はモノクロと使い分けている点は演出として分かり易い。しかし、画面サイズもコロコロと切り替わり、ビスタになったかと思えばシネスコサイズになったりと、同じシーンでも切り替えが頻繁に発生し、逆にストレスに感じてしまう。これもノーマの心理描写を表しているのかもしれないが、ノーマにストレスを与えるより前に観客にストレスを与えるなという話である。

しかし、本作唯一の救いは、やはりアナ・デ・アルマスだろう。映画の中ではスター、実生活は悲惨な人生を送ってきたマリリン・モンローという難役を果敢に演じ切った。まさに旬の女優がここまで曝け出し、また精神崩壊するキャラクターに憑依してしまうのも凄まじい。本物のモンローと瓜二つに見える再現ショットもあるので、見応え抜群。

そのアナ・デ・アルマスの熱演に泥をかけたとしか思えない、(ストーリー自体もそうだが)破滅的な内容と監督の自己満でしかないフィクション部分が完全に蛇足になってしまった残念な作品。鑑賞前の期待はかなり高かっただけに、167分の長丁場を耐えた先に得られるものが何もない作品というのも珍しいかもしれない。




……というかこれプランB製作だったのか。
オスカー常連だけど、さすがに本作は賞レースには参戦しづらい、業界的には参戦させたくないかもしれないぇすね。
Yoshishun

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