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エゴイストのsyuheiのレビュー・感想・評価

エゴイスト(2023年製作の映画)
3.5
2023年の松永大司監督作品。

思春期に母を病気で失った浩輔はゲイであることを公言せずファッション雑誌の編集者として優雅な独身ライフを送っていた。パーソナルトレーナーの龍太と恋に落ちた浩輔は龍太が金のために男娼の副業をしていると知り経済的な支援を申し出る。良好に続いていた2人の関係は残酷な運命で終わりを迎え…。

鈴木亮平がゲイ役に挑んだ本作。生々しい肉体関係の描写が話題になったがそれ以外にも繊細な仕草や表情まで見事な芝居で魅せる。喜多見や上林や冴羽獠と同じ人が演じているはずなんだが本作では浩輔にしか見えない。手垢のついた言い回しだが優れた俳優というのは末端神経まで役に乗り移るのだろう。

エゴイストというタイトルからサスペンス劇になるのかしらとハラハラしてたら直球のヒューマンドラマだった。概要欄くらい読んでおけばよかった。2つの大きな幹があり、1つは同性愛カップルにおけるパートナー家族との関係性で、これは『きのう何食べた?』の特にシーズン2にも通じるなと思った。

もう1本の幹は自分中心の独身ライフを謳歌していた男が、龍太との出会いから無条件な愛、つまり自分に与えられるものなら惜しみなく与えることに生きる喜びを見出すという話。ただ、こっちはちょっと描きこみ不足が否めず伝わりづらい。takerとしての浩輔を描けばこそgiverへの変化に感動が深まった。

惜しみなく与えるunconditionalな愛は結婚という制度によって保障されるものではないし、実の子に対してすら奪おうとする親も。このテーマを語るのに欠かせないのが"奪われ続けてきた存在"である龍太とその母親なんだがテンプレ的困窮家庭にとどまっており、ここにもうひと工夫ほしかったところ。

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