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エゴイストのmofaのレビュー・感想・評価

エゴイスト(2023年製作の映画)
5.0

【愛にはエゴが必要なのだ!】

ずっと観たかった作品です。
なんと、ウチの近所のTUTAYAでは
取り扱いなし!!と聞いて、
TSUTAYA見損ないました。
ゲオでは何本も並んでて、やっぱり、ゲオだわ!
多少遠くても、
今後はゲオでいこうと決めました(笑)

楽しみで観たんですが、
手振れ画像で、
吐きながら視聴した次第です。
☆5.0ですが、手振れ減点は入ってません。

本当に良い作品でした。
しかも、もう観る事が出来ないと思うと、
余計に、切なさがこみ上げます。
 
とにかく、鈴木亮平様が抜群にいい。
もう、本当に素晴らしかった。
完全に浩輔だった。

この題名の意味を考えながら観ていて。
浩輔の尽くしたい気持ちが、
「エゴイスト」なのかと思い、
ちょっと、腑に落ちなかった。
 でも、最後の最後で、
この「エゴイスト」という意味を、
自分なりに解釈出来た。
 愛は、エゴでなければ。
そう言いたい作品なんじゃないかな・・・・。


☆以下、ネタバレです☆
【鈴木亮平様の演技が素晴らしい】
ゲイとかそういう事あまり関係なく、
浩輔という人間を
完璧に演じきれていたと思う。
 だからこそ、龍太亡き後も、
その母と交流する流れに、
違和感を感じなかった。
 人に気を遣い、優しくて。
一つ一つの演技が、本当に繊細で、
静かに怒る表情や、龍太への眼差しや、
その母親への接し方。
 これほど、カメラアップに
耐えれる俳優さんはいないと思う。
アップだからこそ、
表情で訴える事は明確に伝わるし、
視線一つ一つが、台詞となって、
流れ落ちてくるようなのだ。
 
龍太が別れを切り出した時の、静かな怒り。
眉毛を描こうとしてるのに、
描けないところの深い悲しみ。
龍太が亡くなって、母親の仏壇の前で、
黙っている姿。
妙子にお金を渡そうと、
遠慮がちに懇願する所。
父親と母親の話をした時の、
涙を耐えるような感じ。
 あげ出したら、本当にキリがない。
鈴木亮平様の演技を観るだでも、
充分な価値がある作品だ。
 この作品はBLものではなく、
完全にヒューマンドラマとして
確立しているのは、
この演技あってこそだ。

【浩輔と龍太のケミ】
宮沢氷魚さんの演技は、
それほど、うまいと感じた事はなかったが、
本作は、けっこうハマっていたと思う。
 鈴木亮平様の演技と比べると、やっぱり、
演技的には見劣りするが、
このハマり度がカバーしていたと思うし。
何よりも、この体当たり役をよくぞ!!
という気持ちが強い。

2人の蜜月は、本当に幸せそうで・・・・
心が近づいていく感じ、
2人が互いに心奪われていく感じが、
本当に伝わってきた。
問題のベッドシーンは、全然余裕でした。
とても美しく撮っていると思った。

 この作品には、この2人!!
そう強く思える。

【エゴイストの解釈】
はじめは。
浩輔が貧乏な龍太に、
援助をしようとしたり、
龍太亡き後も、その母親を援助していたり。
そういう、ある種の一方的なものを
「エゴ」と言うのかな??
と思って観ていたのだけど。
 どうしても、浩輔のそれらを
「エゴ」と呼ぶ気持ちには
なれなかった。
 何故なら、浩輔は人一倍、
龍太にも、その母・妙子にも気を遣っていた。
 本来なら、龍太を養う事も出来たが、
龍太のプライドなどを傷つけないように、
細心の注意を払っていたと思うからだ。
 きっと浩輔の気持ちからしたら、
その100倍は、愛する人のために
尽くしたいと願ったと思う。

 なので、何だか違和感を
抱えながら観ていたが、
最後の最後で、その考えが、
完全に覆った。
 病床で、龍太の母・妙子は、
帰ろうとする浩輔の袖をつかんだ。
「まだ、帰らないで・・・」

妙子は、ここで初めて「エゴ」を
発動したのだ。
その瞬間、コレなんじゃないかと思った。
浩輔にしても、龍太にしても、
逆にこの「エゴ」が
足りなかったんじゃないかなって。

浩輔がもっと、龍太のプライドとか考えず、
支援を申し出ていたら・・・・
龍太が、浩輔をもっと頼っていたら・・・・
事態は、もっと違う方向に
向かっていたかも知れない。
 互いに互いを想い過ぎたために、
この悲劇が生まれてしまったような気がする。

 「まだ、帰らないで」
そんなささいなエゴやワガママが、
愛には必要なんだと。
浩輔は妙子のその言葉に、安堵したし、
嬉しく思っただろうと思う。
それと同時に、龍太にも、
そんな風に頼って欲しかった・・・
と思ったかも知れない。

 愛は難しい。
浩輔は、龍太・妙子を
助けたいという気持ちと、
自分の愛は「エゴ」なんじゃないかと。
そのジレンマで苦悩する。

龍太や妙子は、浩輔に迷惑をかけたくない・・・
対等でいたいという気持ちで、
「エゴ」とは程遠い。

それほどまでに、「エゴ」と「愛」は
複雑に絡み合っているのだと感じた。
 
また、ここでは、ゲイという関係性も
影響してくるのかも知れない。
男女の恋なら、「結婚」とかそういう
落としどころで、
エゴなんて気にせず、援助したかも。
 そして、ゲイという事を隠して
生きてきた浩輔が、
遠慮がちに生きてきた・・・という事も、
完全なエゴイストになれない
下地のような気がする。

愛には、適度なエゴも必要なんだ。

愛なのに。
相手を気持ちを気遣うがあまり、
ジレンマに陥る浩輔。
何度も謝りながらお金を渡す浩輔。
安いメロンを選ぼうとする浩輔。
全部の浩輔が、切なくて悲しい。

愛なのに。
一方通行で、正解かどうか
分からなかった浩輔の愛は、
妙子の「まだ、帰らないで」という言葉で、
救われたに違いない。
 エゴでもなく、愛だ。
そして、自分と龍太の愛には、
きっと、まだまだ互いの
エゴが足りなかったのだ。
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