てらしん

ハンガー・ゲーム0のてらしんのネタバレレビュー・内容・結末

ハンガー・ゲーム0(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

なぜハンガーゲームは誕生したのか、ハンガーゲームの意味とは

スノー大統領の人間性が形成された過程を緻密に劇的に描いた作品。
 

 古臭い、または牧歌的な闘技場で繰り広げられる、シリーズ1作目よりも直接的なバトルとそれを最大限魅せる攻撃的な演出は見ていて手に汗握りました。
 支配される側ではなく、支配する側の視点で描かれるハンガーゲームの世界は私に新たな臨場感と興奮を与えてくれました。
 

 壮絶な幼少期、叔母と従姉の扶養、学校での体裁と不安定な友人関係、ゲームの賞金と新たなルール、博士からの期待、頼れる人がおらず孤独に戦わなければならない青年期、常に破滅と隣り合わせの人生を送ってきたスノー、最後の最後で唯一信頼する人物に裏切られれば、そりゃいくら何でも壊れるわな。スノーの内に秘められた狂気に気づいてしまったルーシーも可哀そう、自分の友人すら手にかけてしまうスノーは流石に受け止めきれなかったか。

 スノーの才能に気づき、自分の後継者としてゲームメイカーに仕上げることが目的のゴール博士、自分の思い付きから誕生してしまったハンガーゲームを終わらせることが目的のハイボトム学生部長、この二人の戦いがこの作品のもう一つの見どころだと思います。博士が新たなルールを追加したのも自分の後継者探しのためだったのかな。
 
 この作品の黒幕であり、スノーが狂った原因であり、今後のハンガーゲームの元凶は間違いなくゴール博士。
 


 酒の席の冗談から誕生したハンガーゲーム、スノーはそのゲームに「人間への戒め」という意味を見いだした。些細なことにも意味を見いだす「知恵」を身に付けてしまった人間はその「知恵」によって身を滅ぼす、なかなか皮肉が効いていると感じました。


 ラッキー・フリッカーマン(演者:ジェイソン・シュワルツマン)の劇中の台詞が本人のゲームに対する向き合い方を端的に表していてすごい刺さったんだけど思い出せないのが残念。

 「傍観するな。ガムを噛むな。背筋を伸ばせ。顎を引け。」
 「笑うんだ!そのために歯がついている。」  ...アッテルカナ?


この映画について深く知りたい人にはパンフレットをお勧めします。なぜ今この映画を作ったのか、ラストの意味は、俳優についてのアレコレ、衣装についてなど色々なことが書いてありますよ。
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