垂直落下式サミング

映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
ヘイトを溜めやすいのび太のクソな性格が、よく表現されていてよかった。前半から中盤まで、ず~っとムカつくガキでイライラ。ユートピアを信じきっちゃってるところとか、明かされた真実を受け入れられずに食って掛かるところとか、ホントぶん殴りたくなる。
信じたいことしか信じない。見たいものしか見ない。皮肉なのは、いちばんユートピアに憧れていたのに、パーフェクト小学生育成カリキュラムでも落ちこぼれるし、バカすぎて洗脳光線の効きも悪いため、支配者のいいなりにもなれないこと。ほんと不幸だな、お前…。
今回は、ゲストキャラがイケメンでよかった。ネコ型ロボット・ソーニャが、いい意味でドラえもんらしくないキャラクターで好みど真ん中。ドラえもんと同じ用途で作られたであろうネコ型ロボットなのに、任務はパラダピアの護衛と警備。ご主人様に逆らえない人造人間の悲哀を背負っている。
ドラえもんの映画では、美少年が出てきてのび太と友達になったりもするけれど、そいつとのブロマンスは徹底して回避され、いつものメンバーとの友情が前面にクローズアップされることがと多い。
しかし今回は、ドラえもんとソーニャのブロマンス色が強め。正義に目覚めたソーニャが、みんなのために一人犠牲となり、その身を賭して町を救うラストシーンなんて、友情以上の何かを感じましたし…。
パラダピアに潜入していたタイムパトロールの女の人が、特殊な光線で撃たれてテントウムシに変えられてしまうけれど、このレディバグは幸せの使いとか、そんな意味付けがあるのだろうなとワクワクしてみていたのに、特に活躍はなく終了。単に小学館てんとう虫コミックスとかけてあるだけかも…。
面白かったのは、開幕ドラえもんが「このどこでもドアはもう寿命だなぁ。」とか言いながら仕分けした秘密道具をゴミ袋に入れるところ。捨てるという表現じゃなくて、リサイクルに出そうってのは、昨今流行りのSDGsを啓蒙するエコメッセージ。
エコだの、サスティナブルだの、SDGsだの、細いニュアンスの違いで言い方を変えて新鮮味を出してかないと、僕らは持続化可能なライフスタイルなんて一生獲得できませんからね。流行りものですから、この四次元ゴミ袋は後半の重要なアイテムになってくるわけです。おさえるところはしっかりとおさえる。さすがのエンターテイメント。
本作をみると、ドラえもんは未来基準では万能ロボットじゃないってのがよくわかる。四次元ポケットのなかには、便利な秘密道具がたくさん入っているような気がするけれど、未来の住人から言わせれば、ほとんどがヘボいポンコツだそうだし、飛行船も中古の型落ち品をローンで買ったりとかしている。ガキのワガママに振り回されて金欠とか、お察っしなフトコロ事情。悲しいなあ。