非常に作り手の慎重さがうかがえる映画だった。全体的にそれこそ作中のシンデレラのようにおとぎ話的。それぞれのキャラが単一の役割を持っていて、ある意味ステレオタイプになっていた。つまり、各キャラの描き方が基本的には表面的なものにとどまっている。ジェンダーの問題が語られる際、無意識に恋愛が前提に含まれていることの問題化という、たぶんこれまでの（日本）映画史であまり浮上してこなかったテーマを先駆け的に扱うにはこのような慎重さが必要だったのだろうし、「丁寧」というふうに肯定的に受け止めたい（とはいえ、母親の変化はすこし雑というかお決まりすぎないか）。それに、そのような表面的なキャラ描写ゆえに逆に三浦透子の演技が光っていて良い。家での焼肉の場面の、あの声の変化には心が揺さぶられた。
あと、屋上での喫煙ショットがめちゃくちゃ良かった。
最後の北村匠海パートが必要だったのかどうかをずっと考えていたが、たぶんあれは必要だった。
