アンコール上映に駆け込んで鑑賞。
主人公は有能な若手弁護士テッサ。レイプ事件の被告弁護人も務めてきた彼女だが、ある日彼女自身が性的被害を受けたことから現行法律の問題点に直面する。テッサを演じるのはジョディ・カマー。最初から最後まで1人で喋り続けて一度も噛まないのがまず凄い。
加害者が見えない一人芝居だからこそ、被害者の感情に寄り添うことができ、被害者が法廷弁護士でもあることから、事件立証のための思考プロセスを共にしてその不可能性に衝突できる。その劇構造は見事。
被害の証拠を原告側が集めなければならず、どうして現場を維持しなかったんだ...!証拠を残しておかなかったんだ!とテッサが自らの愚かさに頭を抱える場面も見られるが、そもそも原告側に負担がかかるその法システムがおかしい。配給のカルチャヴィルによるアフタートークでは、直前まで合意があった付き合うかもしれなかった男からのレイプは日本であればそもそも起訴されないかもと指摘があり、今まで声にならなかった声は日本でもさぞ多かろうとゾッとする。法制度の変更はどこも大変だ。まずはこの演劇を用いて加害者を生まない教育に役立てているとのことだった。
本作は2023年ローレンス・オリヴィエ賞 最優秀新作演劇賞、ジョディ・カマーは最優秀主演女優賞、トニー賞でも最優秀主演女優賞を獲っている。畏れ多くもその賞に文句付けるようだが、前半のコミカルなパートには少し固さがあり、きっと生真面目な方なのだろう。軸足が真面目側に残ってしまうと全体に重みが増し、当然軽すぎても良くないのだが、そのバランスは難しいとも感じた。