SANKOU

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

日本でもここ最近、著名な演出家や映画監督が、女優やスタッフに同意のない性行為を強要していたことが勇気ある告発によって次々と明るみに出されている。
また作品作りの裏側で信じられないパワハラが行われていた事実も明らかになっている。
何だか作品の感動を奪われたようでショックが大きい。
人は権力を持つと、時に欲望を抑えられなくなる弱い生き物なのだと改めて思い知らされた。
この映画はあるハリウッドの名プロデューサーが長年行ってきたセクハラや暴行を、ニューヨークタイムズの記者が記事にして世間に暴露するまでの衝撃的な過程を描いた作品だ。
何故被害者である女性が、訴えられるかもしれない恐怖に怯えなければならないのか。
そして非難され、仕事を失う恐怖に耐えなければならないのか。
性差別の歴史は本当に根が深い。
最近になって漸く女性たちが声を上げられるようになったが、それまでにどれほどの人達が苦しみに耐えて来たのかと思うとやりきれない気持ちになる。
ミーガンとジョディーの二人の記者は、ミラマックス社のプロデューサー・ワインスタインから性被害を受けた女性たちにコンタクトを取る。
彼女たちは示談によって口を封じられ、オンレコで事実を話すことが出来ない。
そしてオフレコでは事実の立証が出来ずに記事にすることは出来ない。
取材を続ければ続けるほど、彼女たちはハリウッドの闇の深さを知り、法律が性被害に有利に作られていることを思い知らされる。
しかし、悪事はいつかは裁かれる時が来る。
ドラマ自体は淡々と進んでいくが、女性たちの証言の生々しさに時折背筋が寒くなる。
また音声だけでワインスタインが半ば脅迫的に女性をホテルの部屋に連れ込もうとするシーンは本当におぞましい。
アシュレイ・ジャドが本人の役で出演しているのは驚いたが、彼女の勇気ある証言によって多くの女性たちが声を上げることが出来た。
今まではおかしいと思いながらも我慢していたことが、今後の社会のあり方によっては改善されていくのかもしれない。
が、同時にどれほど問題点を改善しようとも、それを悪用する人間も出てくるはずだ。
ありもしない性被害をでっち上げる者も出てくるかもしれないが、それも今までの男の権力者の傲慢さの代償か。
世の中は対立を繰り返しながら、少しずつ良くなっていくものだと思いたい。
SANKOU

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