常盤しのぶ

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

4.5
ま た 月 曜 日 が や っ て く る

毎日毎日同じような事を繰り返すばかりの代わり映えしない退屈な日々。誰でも経験したことのあるあの形容しがたい虚無感と焦燥感を『実際に一週間を延々とタイムループする』というちょっとしたSFで表現した本作。

上司にタイムループを気付かせる手段として先輩→リーダー→上司……と日本の会社員らしい上申制度を用いているのは笑った。タイムループという荒唐無稽な現象を現実的に納得させる手段がそれぞれに用意されており、奮闘する姿が面白い。特に最後の部長を説得する方法が少々お時間をいただいてから会議ブースでパワポを使ったプレゼンである。

様々なタイムループものを観てきたが、こんなジャパナイズされたタイムループは初めてだ。社員が忙しくしている間、部長が呑気にジャンプを読んでいるのも再現せんでええのよ……。いつタイムループを抜けてもいいように仕事だけはきっちりこなす社畜精神が哀愁を漂わせている。

仕事かプライベートか。これまた誰もが一度は抱く葛藤を主人公の円井わんが熱演している。クソみたいな要求を出すクライアントと、なんとかそれに応じて転職したい主人公。クソだと思っていたクライアントの上には更にクソな上司がいて……自社だけでなく他社目線でもしっかりジャパナイズされている。

タイムループのギミックが秀逸。キーとなるハトもそうだが、伏線の張り方と回収方法がとても上手い。観終わった後あまりのギミックの上手さに思わず唸った。ここはネタバレになるので言及しない。

物語の構成も上手い。SF要素がタイムループとその解除方法しかない中で、それらをいかにして現実世界に落とし込むか、という観点で本作は非常に高いクオリティで表現できている。それを82分という短尺で収めているのもまたすごい。

途中まで嫌な、というかボンクラなマキタ部長。中年らしい寒いオヤジギャグに若者に通じないフレーズなど、どこにでもいる迷惑な上司である。しかし、終盤のとあるシーンで思わず泣きそうになってしまった。そう、上司という存在はかくあるべしなんだよと、私は胸が熱くなった。

タイムループを錯覚するような代わり映えのしない退屈な一週間でも、それぞれがそれぞれに様々な悩みや葛藤を持ち、それでも前を向いて進んでいると気付かせてくれる、とても好きな作品となった。人生に疲れた人に是非観てほしい。

それはそれとして、忙しくしている中でジャンプを読むのはやめてほしい……。