“今を生きるということ”
故郷を逃れ、過酷な環境を生き抜くために放浪する姉弟を描いた油絵風アニメーション。フローランス・ミハイユ監督が10年の歳月をかけて完成させた実録作品。
昨夏の『オオカミの家』のような個性的なインディーズアニメーションとして、硝子の上に絵具を塗っていきながら撮影を行うという、ほぼストップモーションのような制作体制を取っている。羽ばたく鳥や彩色豊かな自然に鮮やかさを覚えながらも、難民が抱える孤独感や疎外感をも表現していく独特の色使い。雪嵐やタバコの煙から家族の姿が浮かび上がるモンタージュでさえも美しくみえる。
ドキュメンタリータッチのため、起承転結ある物語とは言い難いが、今なお続く難民問題に果敢に斬り込んでいきながら、数多の犠牲と別れを経て今を生きる監督からの生きるという有り難さを感じられる良作。来月のアマプラ配信終了前に是非。