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ジェーンズ -中絶の権利-のくりふのレビュー・感想・評価

ジェーンズ -中絶の権利-(2022年製作の映画)
3.5
【私はそれを裁かない】

U-NEXTにて。『コール・ジェーン』の後に存在を知り、見てみたHBO製ドキュメンタリー。

2022年、本作の完成後に、アメリカでは再度、人工妊娠中絶権が違憲とされてしまったのですね。いったん解散した、この中絶支援団体“ジェーン”はまた復活している…との話も聞きました。

内容は、元「ジェーン・コレクティブ」のメンバー、複数人のインタビューから当時を振り返る構成で、『コール・ジェーン』からはわからなかった時代背景や、水面下で多発していた中絶“需要”のシビアさなどが、よく伝わってきました。

時代の流れから必然のように現れた状況で、中絶だけが問題ではなかったのですね。ベトナム戦争泥沼化の影響も、確実にあったことでしょう。

男性優位の世界で、さらに、シカゴはカトリック教色の強い場所。政治構造も同じ状況だった…と語られますが、そのがんじがらめ感は想像できます。

中絶経験者が多いメンバーの語りには、いちいち説得力がありましたが、「政治に任せておけない問題だと経験から悟った」というのには、本当にそうだったのだろうなと。このジョディという中心メンバーは一時、心を病むまでに活動に追われたようですが。

ジェーン利用者の発言で唸らされたのは「私は修道院で育ち修道女に虐げられてきたから、女性は女性に冷酷だと思っていたが…」という、まさにカトリックの性的虐待につながる告白。あの十字架連中にはホント、裏表あり過ぎるよね。

『コール・ジェーン』でも触れていたが、広告も出して活動していたのに、すぐ摘発されなかった理由にもナルホドと納得。どうしたって、歪んだシステム下では“需要”が増えてしまうのですよね。

男性関係者で要となった施術者は、『コール・ジェーン』より説得力ある、おもしろい人物でした。…当たり前だけど。w 彼の、仕事人としてではない、本音を聞いてみたかったけどね。

…等々、並だが興味深いドキュメンタリーでしたが、知っておくべきコトがたくさん、詰まっておりました。『コール・ジェーン』と二本立てで体験すれば、食い合いではなく、相乗効果が見込めますね。

当時を撮り収めた映像には8mmもあったことでしょうが、そのフィルムの光と影はくっきりと、心に刻まれました。やっぱり、ドキュメンタリーも気にして生きてゆこうと思います!w

<2024.3.25記>
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