個人的にヤバイ人の前日譚モノの映画は肩透かしを食らうことが多かったけれどこれは最高だった。
前作『X エックス』で史上最高齢シリアルキラーなんて言われていたパールの若かりし頃の話だけどこれ単体で観ても面白いし、前作もさらに好きになる。
シリアルキラーにカリスマ性を持たせて美化するような形ではなく、ちゃんとあの婆さんの若い頃だなぁと思わせてくれる仕掛けが沢山。
めちゃくちゃ面白くてとても悲しい。
ある程度頭をチューニングして怖がりながら楽しめればと思っていたけど想像以上に志が高い作品だった。
前作では老いについて、性についてなど嫌でも考えさせられ、本作はヤングケアラー問題や毒親の存在なども目立つ。
劇中多くの時間でパールは映画の中で踊ることを夢観ていて、人生における自分の可能性についての映画という側面もあり前作から通じているように感じた。
パールが家畜の動物相手にダンスを披露したり踊っている時の脳内映像などはミア・ゴスが素晴らしかったこともあり印象的。
あぁいう“スターになっている自分”みたいな妄想は覚えがあって他人事に思えない。
というか自分も恥ずかしながら現実が疲れてくると未だに脳内でギターを持って満員のライブハウスで演奏したりするし、仕事中には強盗を速やかに撃退してニュースになる妄想などもする。
笑うしかないのだけどパールのこと決してバカにできない。
またまた『悪魔のいけにえ』オマージュだけど今回爆笑した。
ホラーはジャンル差別が根強いのか特にオスカーなどで無視されている印象。
このミア・ゴスがノミネートされていない賞はあまり信用できないと思った。
