マインド亀

Pearl パールのマインド亀のレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
5.0
その笑顔を刮目せよ!今年度ベスト・オブ最恐エンドロール!

●昨年惜しくも見逃してしまった『エックス』をアマプラでようやく見ることができ、本作の映画館での鑑賞に間に合いました!上映回数少なかったけれどもなんとか滑りこめてよかった〜!絶対に映画館で観ることに意味がある、大傑作と言って間違いない一作!

●前作『エックス』は、テキサスの片田舎の古い家を舞台にシリアルキラーの老夫婦がポルノ映画の撮影チームを惨殺しまくる、いわばテキサス・チェーンソー型ホラームービー。
本作はその同じ家を舞台に、老女がいかにしてシリアルキラーとなりあの家に住み続けることになったのかを描いています。
前作『エックス』と『パール』を続けて作った事により、『エックス』で、本作の伏線を遡って回収するという、緻密な構成が素晴らしすぎます。
例えば、前作であの池にいたあのワニちゃんがいたり、なぜか沈められていたあの車、とか、『ブロンドは嫌いなの』といった言葉の意味などが回収されてておもわずニヤリとしてしまいました。また、「あの家」のまだキレイだったころが映されるのですが、思わず「ああ、パールの踊ってるこの場所で60年後にあいつが殺られてたなあ…」などとしみじみしてしまいました。なのでもう一回『エックス』を再鑑賞してみようかなあ。

●最近は、映画史を振り返り、新たに再構成する試みがあらゆる映画でなされていますが、このシリーズは映画史の裏歴史でもある「ポルノ史」が一つの筋として組み込まれております。これについては次作『MaXXXine/マキシーン』でおそらく成人指定「XXX」のポルノ映画そのものを取り扱うのでは?と言われてますので、三部作全部を観てこの一つのテーマをどうりょうりされるのか、非常に楽しみです。
タイ・ウェスト監督は映画に関する知識量が半端ないんですね。本作に散りばめられた映画の小ネタやオマージュは、BLACKHOLEの『パール』評で勉強させてもらいましたが、何から何まで行き届いていてスゴイ!おそらくこの三部作で一気にハリウッドのトップ監督に躍り出るでしょう。

●そして本作をバネにトップに躍り出るといえば、ミア・ゴスその人に他なりません。籠に押し込められた夢見る少女パール、そしてその反面、どこかが欠けているシリアルキラーのパール、この両面を内包する狂った主役を演じるミア・ゴスが素晴らしすぎます。ネタバレなので多くは書きませんが、めちゃくちゃ自慰するやん!めちゃくちゃ号泣するやん!めちゃくちゃ夢見るやん!めちゃくちゃひと殺すやん!って瞬間瞬間でコロコロ変わってミア・ゴスの魅力を画面いっぱいに映すので、これはもうミア・ゴスのアイドル映画としか言えません。
ミア・ゴスにアカデミー賞ノミネートさせてあげても良かったのではないでしょうか。

●で、ホラームービーとしてどうなん?というところですが、これはもう、ミア・ゴス/パールの狂気を楽しむ映画でして、シリアルキラーとして覚醒してからのひとつひとつの挙動エグみが怖くて面白い。
あのラストの斧を持って追いかけてくるワンカットですが、パールの挙動を捉える引きのショットがめちゃくちゃ良かったです。あれ、本当にヤラレル時の怖さがありますよね。「あ、コケちゃった…」って本当にあの人、全然悪くない人なのに可哀想…
そして何と言っても豚、ウジ虫、カビ、死人との食卓。伝統的なホラームービーの要素を取り込んで、最高に狂った食卓が楽しめます。こういう生理的なイヤな感じをちゃんとやってくれるのが良いですね。

●本作はとてもシンプルで、ストレートで、そして力のあるストーリーでした。短くまとめられてるのも良かったですし、何と言っても映画史に残るあのエンドロールが強烈なインパクトを残しました。前作『エックス』も含めて、本当に楽しいオリジナルシリーズを観られるのは最高の贅沢かもしれません。是非リアルタイムで観て、自作を楽しみに待ちましょう!
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