マインド亀

虚空門 GATEのマインド亀のレビュー・感想・評価

虚空門 GATE(2019年製作の映画)
4.0
UFOよりも確実に存在するのは「愛」
サスペンスフルで優しく、そして悲しく愚かな人間ドキュメンタリー

●いや、この作品には参りました。久しぶりにヒリヒリするドキュメンタリーを観ました。
まずもってつくり手がこの作品をどうしたいのかがわからないくらい、無軌道に面白い方向に面白い方向に進んでいくので目が話せないんですね。説明が少ないし時間のジャンプが多いので、画面で起こっていることをしっかりと観ないとわけがわからなくなるんで、決して上手とは思えないんですが、次第に形になってくるこの作品の輪郭に驚愕し、ドキドキし、なんだか良くわからないけど心拍数が上がってくるんです。うまくは云えないけどそんなドキュメンタリー。

●最初は、宇宙人の解剖映像がホンモノかどうかを有識者に訪ねていく作りなんです。有識者って言ってもオカルト論者、UFO研究家といったビリーバーたちなんですけど、この映画は決して彼等を面白おかしく、怪しいものとして映しているわけではないんですね。
そうしてる内に、元俳優の庄司哲郎と運命的な出会いをするわけです。彼はきうちかずひろ監督『Be-Bop Highschool』で主演をしてた俳優で、本作の時点では、『とくダネ』の小倉智昭がパトロンとなって、絵を描き続ける芸術家のような感じになってるんですが、彼がUFOを呼び出すことができるって言うんで、焦点は次第に彼に絞られていくわけです。
で、実際に空中にUFOを呼び出すんですが、うまく映像に収められてないんですよね。で、再トライをしようとして日中の撮影をするのですが、彼がスマホを取り出して空を写真に映すと、空飛ぶ物体が映るんですね。
こりゃすごい、彼は本物だ、なんて言ってUFO信者のコミュニティで有名になってるらしいんです。

●で、本作はここから事態が急転。彼は突然失踪し、連絡がつかない状態に。これはなにかの陰謀に巻き込まれたのか?UFOにさらわれたのか!?とサスペンスフルな展開にゾクゾクするんですよね。
で、ここから先、おそらく報道などもされていたので知ってる人は知ってるかもしれませんが、あえてここではこれから先の展開は書きません。とにかく、ここから先この作品はあっちこっちに観客を振り回していくんです。おそらく作ってる本人たちもどうしたらいいかわからない状態だったんだろうと思います。なんせ、途中で、「Oh…」というなんだか心がざわつく展開があるのですが、だからといってこの作品の核がそこにあるというわけでもない。あるのは人間の心にあるUFOと愛なんだ、というような表現しかできない作品なんです。
ラストも驚愕。森達也監督の『FAKE』みたいな読後感もあります。
もうね、観てもらうしかない。観て是非感想を聞かせてほしいんです。こうまで心を狂わせる、UFOとは一体どういう存在なのか。人間とは何なのか。そう考えさせられる作品です。ぜひ観てください!
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