最もピュアで、脆弱な立場に置かれたシリアルキラーだからこそ、暴力の衝動もまたピュアに現れてくる。抑圧的な母親、裕福な義理の姉、態度を豹変させた不倫相手との権力関係が固着し、どうにも動かすことができないと悟った瞬間に、パールは相手の身体を物理的に破壊するしか道がない、という発想に一気に至る。日常的に抵抗することができない動物を殺していたパールは、動物に対する自らの絶対優位から安心を得てもいたのだろう。そうしたパールにとって殺人とは相手を動物化することだが、彼女が相手から理解し合えない人間として動物化されることの方が、順番としては先なんだろう。