ぺんじん

熊は、いない/ノー・ベアーズのぺんじんのレビュー・感想・評価

4.2
最初は辺鄙な村を訪れた映画監督のほんわか田舎村コメディに見えるんだけど、監督が村人の写真を撮った事によってその村のトラブルに巻き込まれてしまい、次第に笑えない状況に…辛い…
イラン国外への外出を禁じられたパナヒ監督。今作では彼の現状そのままに、トルコでの映画ロケをイランの田舎町からリモートで演出する監督のシーンから始まる。
田舎村はのどかで牧歌的な感じなんだけど、トルコとの国境に接しているという事で、いきなり緊張感ある場面に入ってしまったりする。この牧歌的な感じにゆっくりと政治状況が入りこんでしまうという所が結構ヒリヒリする感じで、こういう所はかなりイランの政治状況を反映しているんじゃないかと思う。
「熊は、いない」。熊がいるという事になっている村の通り。でも熊はいないのだけども、皆そこを通ることは無い。
国境も人工的に作られた実態の無いもの。その見えない「熊」に苦しめられている様々な人々をこの作品ではかなり丁寧にリアルに描いているように感じた。
自由に国外に移動できる国では起きない悲劇。初めの華やかな結婚式と対照的な終わり方に心を揺さぶられた。ラストのパナヒ監督の鋭い視線が印象に残る。
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