お望月さん

熊は、いない/ノー・ベアーズのお望月さんのレビュー・感想・評価

4.5
イランでの映画製作禁止・出国禁止となったパナヒ監督は、トルコ国境の村で映画のリモート撮影を指示していた。ところが、ある因習にまつわる事件が発生し監督は松村(松明をもって家屋を囲む村人)に取り囲まれてしまう。一方、トルコでの撮影ではトラブルが発生。密航カップルに亀裂が入る事件が。どうなる映画撮影。

と、いうコメディチックな導入なんだけど結末は限りなくビター。
本作はパナヒ監督自身を撮影するパートが多く、セミドキュメンタリーになっている。彼がイラン国内に存在するだけで「映画を撮影しているのではないか」という疑念が付いて回り、何も撮影しなくても天狗裁きが発生しうるという世界の縮図が描かれている。
二重進行する物語、何を映さないのか、という取捨選択。そして、最後の警告音。これが映画だ。