ネギの子供

アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~のネギの子供のレビュー・感想・評価

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志の高い映画。社会は変わったと、年寄りより先に若者が理解している話。そしておじさんが自分たちの責任と向き合う話でもあるのか。歴史的裁判の検事を引き受けるのに、主人公のフリオが最初はまったくノリ気じゃないのが面白い。確かに脅迫があることは明白で家族にも危険が及ぶけれど、仕事として非常に面倒くさい。もう全然やる気がない。いまだにファシストは多いけれど、民主化したんだから、もういいじゃないかというあきらめなのか。まさに中年の景色。そこが若者たちの行動と、人々の証言で覆る。日本の敗戦後と比べてみると面白そう。時代ががらっと変わった直後の人々の物の見方の変化、党派性、疑心暗鬼、渇望、そして先行世代の罪。それらが非常に高レベルの解像度で描かれていて、ゆえに志が高い。伊丹万作「戦争責任者の問題」を思い出した。