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バートン・フィンクのbennoのレビュー・感想・評価

バートン・フィンク(1991年製作の映画)
3.9
コーエン兄弟監督作品5作目…。

今作は監督自身の分身とも言える主人公バートン・フィンクをイジメ抜く自虐ムービー…これまでのコーエン監督作品の中でも、もっとも変態性(エロではなく)のハードな作品です…。

書けない苦しみは地獄であり…書くために悪魔に魂を売った男の話…。

大好きレフン監督のあの失敗作(私は失敗作とは思いませんが…)での主演ジョン・タトゥーロが今作の主演! 勿論『ビッグ・リボウスキ』での強烈キャラ"ジーザス"役も大好き!

太平洋戦争間近の1941年…ハリウッドに招かれた社会派の脚本家バートン・フィンク…。映画会社の社長よりB級プロレス映画の脚本を書くように命じられますが…勿論社会派のバートンにはそうゆうものは書けません…暗に商業主義ハリウッドを揶揄しているよう…。

バートンは全く筆が進まずスランプ状態…。

そんな中、笑い声がうるさいとクレームをつけたことがキッカケで隣室のチャーリー(ジョン・グッドマン)と親交を深めていきます。

巨漢でクシュとした笑顔が可愛らしく、一見『気さくな庶民』のチャーリー……しかし彼の正体は『殺人鬼ムント』だったのです…!!


とにかく序盤から不穏で怪しい雰囲気に包まれます…
バートンが宿泊することになった『ホテル・アール』…奇妙なホテルの受付係、めちゃ暗いエレベーターガールではなくエレベーター爺さん、やたら長〰︎いホテルの廊下…。部屋の中でも、剥がれる壁紙、天井のシミ、軋むベット…蒸し暑く、息苦しい…加えて、太っちょチャーリーの汗っს…まさにこのホテルは"悪魔の住処"…。

そしてある殺人事件から思わぬ展開へと…。

バートンが目にしたチャーリーは、恐ろしい殺人鬼ムント…「ハイル・ヒトラー! 」と叫んでショットガンをぶっ放します…。

彼はバートンに言います…「旅人でしかないお前がここに住んでいる俺に『物音がうるさい! 』と文句を言うのか? 」…悪魔の住処を牛耳る悪魔そのもの…。

バートンが拠り所とした"チャーリーとの心の交流"も完膚無きまでに撃沈!!

ようやく書き上げ、傑作と思った作品は社長の逆鱗に触れ「作品は書かせても製作はしない」という生き地獄…。


そしてバートンは部屋に飾ってあった、砂浜で後ろを向いた水着の女性の絵の中へ…ようやく重荷から解放されます…

ただそこでは海面に飛び込む海鳥…太平洋に落ちる軍用機が海面に向かって急降下するイメージ…どこまで行っても不穏です…。
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