歯医者のお姉さん

バルド、偽りの記録と一握りの真実の歯医者のお姉さんのレビュー・感想・評価

3.3
物語でもない、自伝でも、ノンフィクションでも、ドキュメンタリーでもない、映画のあり方をまたしても超えてきた。妄想なのか現実なのか境目が分からない作品は数多いけれど、この作品はより一層曖昧になっていて面白い。現実だけどその時の気持ちや感覚を誇張して映像化していたり、明らかな幻想が現実だったり。影でちらっと言われた悪口さえも現実なのか本人の意識の産物なのか…って。戻っていくベビーという発想も面白い。お父さんと話す時の造形とか、ダンスシーンの表情や撮り方も面白い、面白いけど、楽しくはないんだよなあ(笑) この監督の作品は"言われてみればそうだけど全然思いつかなかった!"っていうことの映像化集みたいな感じで毎回感心はさせられるものの、クリエイティブすぎて理屈人間の自分にはどうも合わないのよね… ずっと俺のターン!みたいなところが疲れちゃう。枠を超えられる柔軟な脳の人、理性よりも感性で生きる芸術肌の人にはとても相性がいいんじゃないかと思う。監督も、自分が良いと思うものが刺さる人に刺さればいい、みたいな、映画監督というより芸術家スタンスで作ってそう。圧倒を通り越してお腹いっぱいです。