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ボーンズ アンド オールのNomのレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
4.4
『君の名前で僕を読んで』『サスペリア』(2018)など、イタリアの鬼才ルカ・グァダニーノ監督の初のアメリカ作品。
上記作品にも出演、ティモシー・シャラメと再びタッグを組んでいるのも熱い。また『WAVES』に出演し、人気を誇ったテイラーラッセルも出演。

-カニバリズムという醜悪溢れる設定とは裏腹に、純愛、ティーンネイジャー独特の感性と向き合う描写や、放浪者の生き様/社会から疎外された人々に重ねて描かれていく若者のアイデンティティ探求作品-
-彼らに共感し深く理解しようとすればするほどカニバリズム(人喰い)がタブーと思えなくなる不思議さ-

とにかく自分にはかなり刺さった。
素晴らしい。

結末然り設定から賛否両論ある作品だと思いますが、リーの放浪者らしい外向的な性格とマレンの道徳的で内向的な性格が影響し合い、それぞれの『自分らしさ』を見つける展開が好み。
2人の各々の感性が足されるというよりは、潜在的にある人間らしさを俯瞰で見れるようになり、成長していく2人の姿には胸を打たれる。

さらに自分の好きなホラー設定やアメリカンロードムービー的な流れも秀逸で、そこで出会う同族の不気味な男サリーや、"骨ごと"を語る男などの人々が二人の関係を深め、あらゆる方向に感情を突き動かしていく。

カニバリズム映画は『RAW~少女の目覚め~』、『スウィーニードット』、『グリーンインフェルノ』など色々ありますが、『グリーンインフェルノ』のように食べられる側にフォーカスした、スリリングなエンタメ映画を期待しないで見ない方がいいです。肩透かしにあいます。上記でも述べている通り、 多様性とか自己の発見などの深みがある作品。
そして美しいアメリカ中西部の風景、音楽、2人の心情変化を楽しんで欲しいです。

スリラーホラーになったり、純愛を描いたり、カニバリズムという特殊な癖故の葛藤が垣間見えたり、感情がぐちゃぐちゃにはなったが、たしかにそこには恍惚としたカタルシスはありました。
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