このレビューはネタバレを含みます
『ジョーカー』というより『アーサー』な映画だった。
ジョーカーを悪のカリスマとして神格化し感情移入していた存在が自分含めた前作の熱狂的なファンであり、ハーレイ。
多くはそのカリスマたるジョーカーを求めていたのに、物語はアーサーがその存在を否定する展開へ進んでいく。そんなアーサーに冷めてしまったのが終盤に別れを告げたハーレイであり、酷評した多くの観客だろう。
前作『ジョーカー』の魅力の大半は上流階級を暴力で破壊する「ジョーカー」がもたらすカタルシスだろう。しかし個人的にはそれと同じくらい、ホアキンの狂気的な演技での「アーサー」の葛藤描写が魅力的だった。
今作はそのアーサーの狂気的な葛藤描写をミュージカルでこれでもかと表現していた。若干退屈な部分もあったが全体を通して素晴らしい演出だったと感じる。
最高傑作の前作を超えてはこない。しかしカタルシスはなくともこの映画は狂気で塗れている。嫌いじゃない。むしろ大好きだ。