このレビューはネタバレを含みます
本当は舞台挨拶上映を観たかったが、流石にそれは難しかった。しかし初日に観ることができ、またこの空間に今泉監督と有村架純もいたのだな、とエレベーター前のポスターに書いてあるサインを見ても感じる。
今泉監督の作品は好きで初期の作品以外は概ね観てきている。その中で、有村架純が主演で、元風俗嬢という説明を見、これは観に行かねばとすぐに思った。
さすが今泉監督。街の上でを観た時も感じたが、彼は長回しカットの天才だと思う。現代はCGの迫力や色彩溢れる美術など、とにかく派手で綺麗な画面が好かれている傾向にあると思う。それは我々視聴者が、長年の刺激に慣れてしまった結果とも言える。
しかし、今泉監督の作品はどれも、足し算ではなく引き算の魅力があると思う。それは静かであることや、あえての沈黙などの間があること。それにより、よりリアルな心情や風景を感じ取ることができる。
風景も、自然を感じる。そう、今泉監督の作品はとても身近で、自然なのだ。自然な中に、ユーモアもあり、作品の中で起こることも、温かく、包み込んでゆく。それが今泉監督作品の魅力だと感じた。
今回の有村架純は、とてもマッチした配役だと思う。つかみどころの無い主人公や、少し気の強く、芯を感じるところも、まさに有村架純のイメージと合っていると思う。
ちひろさん、という風来坊のような人物が、周りの人達を励ましていく。
特に、一番共感したのは
味のしない食卓。
これはいいね、という共感。
この二つだった。
孤独。
できれば、ちひろさんには、あの場所で母親のような人と、父親のような人、兄弟姉妹のような人達に囲まれて、笑顔で幸せに過ごしていってほしかった。
あと、元風俗嬢の役でということなのか、水商売の人の雰囲気がメイクにも出ていたと思い、すごいな、と感じた。ただの勘違いかもしれない。
同じ星の人。
期待しないこと。分かり合えなくて当然ということ。
今泉監督は愛のあるコントを書こうとしているのだろうか。さすがである。
