今泉監督のつくる空気感やっぱり好きだと思いました。
穏やかで優しくて安心できる世界がそこにあって。でも登場人物それぞれ悩みや辛い過去、冷たい現実を抱えながら生きている。そのコントラストが大きくなりすぎず、心地よい距離で伝えたいことが伝わってくる。押し付けがましくなく説得力があるんです。
今回のちひろさんについても同じ。特に今回は、より強く優しさと淋しさを感じた。
面白いなと思ったのは、お墓に溜まった水に溺れかけている蟻をちひろさんが掬うシーン。これはお墓に行ったときに思いついたシーンなのだろうか。とてもよくちひろさんの人柄を表していた。
「みんな違う星から来た宇宙人だから分かり合えなくて当たり前なんだ」
「あなたならどこにいたって、孤独を手放さずにいられるわ」
孤独や淋しさは負の方に捉えられることが多い気がするけれど、この作品ではそうではない。それが嬉しかった。不思議なのは、今泉作品に関して、人生の刺さるタイミングで刺さる作品に出会うということ。でもそれは偶然ではなく、今泉作品が人生でいつみても刺さる普遍的作品であるということなのかもしれない。
そしていつも思うけど、子役の使いどころが上手い。今回もマコトがとても良い味を出していたなぁ。
追記
今泉監督の作品をみると、世界は名前のない関係性でできてるんだなと思う。そんな関係性が多いほど豊かだなと感じる。もうすでに近くにたくさんある、微妙で心地よい関係性に気づくことができれば、こんなふうに優しい世界になるんじゃないかな。
