DJあおやま

ちひろさんのDJあおやまのレビュー・感想・評価

ちひろさん(2023年製作の映画)
3.8
やさしさと包容力を持ち、どこか影のある”ちひろさん”を中心とした群像劇。ちひろさんは一見、芯のある女性に映るが、実際はなにか寂しい過去があり、どこか空虚で、もろく弱い部分も持っている。人と近づきすぎす、駆け引きもせず、いつでもす~っと離れられるくらいの距離を保ち続けているのは、彼女なりの防衛本能なのか。これまでのイメージとは違う、新たな顔を見せる有村架純がとてもかわいらしい。そのほかに、リリー・フランキーは相変わらず良いし、今泉監督作品ではお馴染みの若葉竜也が出演していてにっこり。
けっして押しつけがましくないが感動的なエピソードたちで紡がれており、迷えるちひろさんの今のままを多恵さんが優しく肯定するシーンや、オカジがマコトの母の作る焼きそばを食べるシーンが良い。特に焼きそばのシーンには、吹き出すように泣いてしまった。刺身を持ったまま醤油が注がれるのを待つ父親のシーンや、憎たらしく嫌味を言う母親のシーンを見せられてるので…。
きっと原作では掘り下げられるであろう、数々のエピソードがちりばめられていた。原作は未読。調べてみると『ショムニ』と同じ作者ということで、ますます気になる。今度読んでみよう。
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