元風俗嬢の出自を隠さず弁当屋で働く「ちひろさん」を中心に描くヒューマンドラマ。ホームレスを自宅に連れ込んで風呂にまで入れる献身ぶりがインパクト大。誰とも分け隔てなく仲良くなり打算や保身など考えず、老成した達観と何でも楽しむ童心を同居させ、飄々と掴み所なく浮世離れ、優しくとも誰にも情を移し過ぎず、独占欲はなくセックスは適当な相手とサラッとやり取りし、孤高で居続ける彼女は、有村架純の清楚な可愛さも相まって、いかに汚泥を被るとも、マンガっぽい実在感なき幻想性が宿り、宗教的なワードはひとつも出ないが聖人の寓話にすら見える。機能不全家族で苦しむ人間を集めて疑似家族となり、「ワイルド・スピード」の如く最後に一堂に会しBBQをやって〆て本人は再び見知らぬ街へ……という弱者の相互扶助を体現する流浪の聖女≒娼婦の救世譚として、割と豪華な俳優陣に美しく整った画面で纏めたウェルメイド感は、いかにもネトフリ的と言おうか。
音楽はくるりの岸田繁。道路のガードレールの鉄パイプを叩くような生活に根差したパーカッションを聴かせる冒頭のBGMでフッと心を掴んでくる。