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リベンジ・スワップのRenのレビュー・感想・評価

リベンジ・スワップ(2022年製作の映画)
3.0
新規性や先進性のあるメッセージが込められたようなものでは特になく、直球の復讐エンターテイメントだった。「面白かった〜」と「こういう映画いっぱいあったな〜」が拮抗して、僅差で後者が勝った感じ。

前提としてカラフルな学園描写は◎。ガールクラッシュものの土台がしっかりしている。青春映画史が『ブックスマート ~』以前と以降で分けられるとしたときの、以降の映画として世界観のクオリティは良かった。パステルカラーの制服や校舎に見えない校舎など、細部までおしゃれ。『セックス・エデュケーション』っぽくもあるかもしれない。

スクールカースト上位の女子と地味な女子が、それぞれ恨みを持つ相手への復讐を遂げるべく、足跡がつかないように「復讐相手を交換(スワップ)して」リベンジしていく。
復讐の矢印の向き、計画の共闘関係が数十分に一回のペースで変わり続けるため、飽きずに観られた。
ドレア(カミラ・メンデス)の復讐方法はそれでいいけど、エレノア(マヤ・サーマン=ホーク)の復讐方法は自分がされたことと呼応していなくてヘンじゃない?という疑問も解決される。そんなことはどうでも良かった。

メッセージとしては「同性愛」「SNS/インターネット社会のリテラシー」「家父長性」などかなり節操無く柱が立てられている感じがしたので、何かを深く批評したい作品ではないと思った。まず復讐のエンタメを撮りたいがまずあって、そこに色々な問題をちょこちょこと乗せたものとして観るのがいい気がする。

①復讐は何も生まない ではなく、②復讐してすっきり でもなく、③復讐したいから復讐したけど自滅する 話になっていていいな〜信頼できるな〜!....と思っていたらやっぱり①に収まってしまってそっか〜となってしまった。
有害な価値観をアップデートしていくために必要なのは「その有害な当事者を晒し上げる」なのか?前時代的な気持ち悪い価値観がダメなのは「誰かの私刑に処されるから」ではないですよ?とは感じてしまう。やり返してやったぜ!のスッキリ感がエンタメには必要とは言えども。
結局全員が、私刑の/復讐の/誰かを傷付けたい欲の 輪の中だった、という話でした。

『ゴーン・ガール』『お嬢さん』『プロミシング・ヤング・ウーマン』など、これらの傑作先行作品があるのだから、やるならもっと突き抜けた作品が観たかった....!

その他、
○ マックス役のオースティン・エイブラムス、シャラメとクリエヴァの中間みたいな、イケメンなのに死ぬほど嫌な奴感が漂っていて良かった。
○ アカデミー賞でのウィル・スミス平手打ち事件をめっちゃ思い出した。
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