「アトミック・ブロンド」や「デッドプール2」といったエクストリームなアクション映画で有名監督の仲間入りをした、スタント出身という個性的な経歴をもつデヴィッド・リーチが監督・製作を担ったアクション映画で、1980年代に人気を博したテレビドラマが原作。
主演がライアン・ゴズリング、助演がエミリー・ブラント、クセのある役でアーロン・テイラー=ジョンソンが出演しており、すごく豪華。
優秀なスタントマンの主人公が、映画撮影中のアクシデントによって隠居生活を送ることになるが、かつて交際していた映画監督の作品の撮影のために復帰をするという導入。
ただ、そこには色々な思惑と陰謀があって… という展開が面白い。
監督がスタント出身かつ主人公の職業もスタントということで、その超人的な身体能力で映画やドラマ産業に貢献しながらも脚光が当たる機会が少ないスタントという職業に対する敬意と情熱が込もった脚本構成になっている。
当然というべきかアクションシーンのダイナミズムや演出の切れ味は最高峰レベルで、様々なアクション映画へのオマージュにも溢れた、見どころだらけの山場が何度もあり、とても楽しい。
とはいえやはりアクション以外のドラマ寄りなシーンは監督があまり演出が得意ではないことが見えてしまい、そういったシーンで少し退屈してしまったのがやや残念だった。
ライアン・ゴズリングは「ブレードランナー2049」や「ドライブ」でのシリアスな役柄の印象が強かったが、「バービー」で演じ切っていた超絶アホ全振りキャラでさらにファンになった俳優で、今作ではシリアスな格好良さとチャーミングな可愛さの両方が発揮されていて、この作品の主人公を担う俳優としてこれ以上の適役はいなかったのではないかと思うほど。
エミリー・ブラントも同じく「ルーパー」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」「ボーダーライン」といったハードめな映画に出演していた印象だったが、今作ではこれまでに見たことがなかった可愛らしさがありながらもクヨクヨと弱気な役柄がとても新鮮で、ますますファンになってしまった。
アーロン・テイラー=ジョンソンの変幻自在な演技力にも毎度のことながら感心したし、カメオ出演の某俳優が登場するシーンでは爆笑してしまった。
80年代のドラマが原作ということもあってか、細部に関する大らかさも感じつつ大団円な結末が痛快で、とても楽しい映画体験だった。
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