半兵衛

ファウストの半兵衛のレビュー・感想・評価

ファウスト(1926年製作の映画)
4.0
合成やミニチュアを駆使した特殊撮影の数々に加えてドイツ映画全盛期による細部にこだわった美術の数々が中世ヨーロッパの病魔に苦しむ下層とパーティーに浮かれる貴族という社会を見事に再現し、原典の『ファウスト』の世界観を心行くまで味わうことが出来た。後半の大雪なんて普通ここまでやるかというくらいに雪を降らせていてビビるが(女性の顔が雪まみれになっている描写を見てこの監督本当にヤバい奴だと確信した)、でもそれほどまでに手を抜かない演出だからこそ後半の愛をめぐるドラマが甘くなることなく純粋な愛のドラマへと昇華され、ラストの救いに清心な気持ちになれるのだろう。

ファウストを誘惑する悪魔をエミール・ヤニングスが嬉々として演じており、ちょっと悪のりしているところも(でもそれくらい監督が気に入っていたという証なのだろう)。後半のおばさんとの絡みが異様に長くて何を見せられているんだと困惑するが、コントみたいで結構笑えるのが困り者。

ちなみに本作は第一部のみの映画化で二部は再現されないものの、ファウストの映画ならではのある行為で穴埋めして原作のラストへ自然に繋げているのが上手い。
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