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ファミリアのsomaddesignのレビュー・感想・評価

ファミリア(2023年製作の映画)
3.5
陶器職人の神谷誠治は妻を早くに亡くし独り暮らし。自慢の一人息子の学は、赴任先のアルジェリアで難民出身のナディアと結婚。新妻の挨拶を兼ねて時帰国してきた。一方、近隣に住む在日ブラジル人青年のマルコスは、仲間を助けたために半グレに追われ窮地に陥る。マルコスを助けた誠治と触れ合ううち、日本人を軽蔑しつつも政治に亡き父の面影を重ねる。

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圧倒的役所広司。
久しぶりにカタギの役を見た。

ナディアさんがとにかく可哀想。
不遇な出自もあって、彼女だけでも幸せになって欲しかった。

不勉強にも知らなかったけど、愛知県は焼き物の名産地でもあって、特に常滑焼きや瀬戸焼は「日本六古窯(ろっこよう)」にも選ばれる名産地。とはいえ劇中で描かれるように、現実ではなかなか経営は厳しいのかもしれない。誠司一人なら生活できる収入かもしれないし、窯や工房の規模から想像するに、意外に評価の高い陶芸作家なのかもしれない。(苦労して陶芸作家になった父親を知ってなお、会社を辞めて陶芸の道を進もうとする学の姿がなんだか安直で、これから父親になろうというのに短慮に思えてしまった)
大きな喪失を抱えた誠司の再生のメタファーでもあるし、灼熱で焼かれて美しい器となる姿は困難を乗り越えて家族として結実していく登場人物たちの姿も重なって見える(そしてそれは壊れやすくもあるのだが)

三人の父親の物語でもあって、学のためにする誠司の行動が馬鹿げた愚行なんだけど、榎本の蛮行と通底して見えて、二人が鏡像関係にいるのが分かる。これから父親になる学の存在は、誰もが愛され/護られていた立場から守る立場に変わる節目にいる。三者三様の父親を描くからこそ、家族のいる喜び、失う悲しみ・苦しさを一度に見せられてる気分。

明快な救いがない分、ラストがとってつけた着地に感じてしまった。ドラマチックな着地より、どっこい明日も暮らしは続く…とばかりに市井の人々の逞しさがあっても良かったような。

余談)
愛知県は日本で一番在日ブラジル人が多い県だそうで、2019年調べで県内に6万2500人以上の在日ブラジル人の方が居住されているそう。(2位の静岡県を大きく引き離しての多さ)
劇中描かれてように、ジャパンドリームを夢見て来日したものの、使い捨てされた人たちの現実に胸が痛む。一方で、厳しい状況でもサンバとシュラスコとビールで楽しくいれちゃう逞しさもいいし、若い世代のブラジル人にも日本人にもなれない人達が不良化せざるを得ない負のスパイラルもまたリアル。



4本目
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