刑務所から9年ぶりに出てきた父親が受け取ったのは、遠い異国の地アメリカで娘が事故死したという訃報
飲酒とドラッグによる事故死というその死因を信じられずに、娘を殺した敵に復讐を誓う男のロードムービー
テレンス・スタンプの復活作であり、カンヌ後にパッとしなかったソダーバーグの回帰作だったようか記憶
原題のThe Limey はイギリス野郎
そういえば、漫画ヘルシングでも同じ言い回しがあったのを思い出す
序盤からソダーバーグの理性的な構図が冴える
異国からやってきたことを示すように画面の左から右へ横切っていく男
それを考えると、イギリスから来た男、という邦題はイケてる
この作品では時間軸がかなり入り組んでいて、ラストシーンも始まりに繋がっていたり、環状な構造になっている
それは男が罪を犯して服役していなければ、娘は死ぬことがなかったかもしれないという因果への示唆でもあるような気がする
フラッシュバックのように浮かび上がるのは、男が知っていた頃の娘ばかりで、復讐に来たはずなのにいまの、死ぬ前の娘のことは何一つ知らない
だから仇の家に飾ってあった娘の写真を盗み出すところは少し切ない
結局娘にも還らない父親の残像があり、通報をすることで過去の父親に復讐するつもりだったのではないかと、男は行きあたる
それはつまり復讐は相手ではなく、自分に対して果たされるべきものだということかもしれない
ちなみに作中の敵役はピーター・フォンダで、彼が車中で嬉々としてバイクを語るシーンはイージー・ライダーを意識してるのだろうし、途中でTVに出てくるジョージ・クルーニーを苦々しく見ている彼は、時代から遅れてしまったかつてのヒーローでしかなく、ふたりのオールドマンが対決するという構図を作り出したのはよかった
ちなみに娘が事故死場所として出てくるのはマルホランドで、娘の運転シーンの撮り方も含めてリンチのマルホランドドライブに多少なりとも影響したのか気になってしまった