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オールド・ジョイのCookieMonsterのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
3.8
出産を間近に控えた身重の妻を持つ男と根無草のような男が連れ立ち、1泊2日で山間の温泉に向かう

2人の男は対照的な生き方をしている
そして家族を持とうとするものは身軽になろうとこの旅行を引き受け、
束縛を嫌い身軽に生きるものは友人を自分たちのサイドに束縛しようとルシファーのように友人を誘惑し試そうとする

2人は共に不安に駆られている
その不安を象徴するように、住んでいる街は荒廃し活気がなく、ラジオから流れる政治は不安定で将来は不確かだ

本作の重要なテーマのひとつは不安に駆られたような迷走にある
だから旅に出る2人は道に迷い、行きつ戻りつしながら、道順の怪しい温泉に向かって車を走らせる

そして重要なモチーフとして橋がある
橋は端と端を繋ぐものであり、行ったきり元には戻れない可能性があるものでもある
そして人間関係は片方で繋ぎ止める錨であり、重しだ
漂流し続けようとする思いと、止まろうとする思い
時代の混迷とアメリカにおける政治性
街を漂うラストに孤独が滲む
ライカートはまるでジャームッシュのように街をきりとり、森を都市に見せかけたり、反対に都市を森に見せかける
作中の台詞のように
その時代性が彼女を位置付ける重要な資質であるように感じた
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