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アメリカン・フィクションのCookieMonsterのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.8
まず最初に絶望がある

自身が書いた小説は一向に認められず、教職を追われ、帰った故郷では母は認知症になり、唯一心を通わせられる関係のような姉を亡くす
少しの軽やかさとユーモアをもって描かれる導入は絶望しかない
自分の信念を裏切るに十分な状況になって初めて、主人公は自分の小説も裏切る
その過程の丁寧さ
哀しみとおかしさ
喜劇的な悲劇であることの明示が導入部でしっかりと示されており、心臓マッサージを受ける脱力した姉の脚にリアリティが宿る

名声やカネは現実の問題を具体的に解決していくのに、彼は自ら作り出したフィクションに追い詰められ孤独になる
これもまた喜劇で、ラストに描かれるように物語のすべては小説のようで、手触りがないのもまたいい
アメリカ映画のように、最後の演説で登場人物が救われることなく、どことなく不幸で、しかし彼の魂にある何かしらは救われている
不幸でも悲壮感の漂わない立ち去り方
ジェフリー・ライトがイイ
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