かいづち

少女は卒業しないのかいづちのレビュー・感想・評価

少女は卒業しない(2023年製作の映画)
4.5
【さよなら。】
春は桜が舞い落ち、卒業生も街中で見かけるこの特殊な憂いを帯びた季節にもってこいな作品です。

廃校が決まり、校舎も取り壊すことが決まった地方高校の卒業生4人の少女達が、避けられない恋や友情の別れや切なさを繊細に描きます。

本作の魅力は、「起承転結」の「転結」にフォーカスしており、少女達の高校生活それぞれの物語にピリオドを打つべく最後の時間を送る姿がとてもエモーショナルに映ります。

“今日わたしはさよならする。世界の全てだったこの学校と恋と。”

本作のキャッチコピーとして使われるこの言葉ですが、確かに学生時代の世界の全ては学校、それを形とする校舎が舞台だと改めて感じます。
そして間違いなく、その舞台で完結した物語は鑑賞者の私自身にも間違いなく存在していて、彼女達が迎える物語の終着点は人ごとに思えませんでした。

また、映像も美しく、舞台となる校舎は桜に囲まれた山梨県上野原市の「旧島田中学校」とその周辺で撮影された風景が、本作中に登場する少女達のどこか上の空な雰囲気を表現するにマッチしていました。自転車のシーンとかもそれを象徴していて大好きです。

私自身、卒業してしばらく経ったものの、私もある種青春を消化し切れずに卒業できていない部分があります。
それを消化するためにも、この系統の作品をよく鑑賞するのですが、その中でも作中の雰囲気への共感性が高く、感情が揺さぶられてしまう本作はとても大切な作品です。
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