柊

パリタクシーの柊のレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
3.4
こちらの想像以上にマダムの人生が壮絶で、驚いた。
1950年代のフランスの女性も何の権利も無い中で生きていた事に改めて驚くけど、自由と人権の国フランスも女性にとってはそれ程自由ではなかったのかってね。当時は暴力如きで離婚する女性はいなかったって…ホントなのかな。
でもあの裁判の様子も陪審員は皆男性。誰1人マドレーヌの言い分を真摯に受け止めている男はいなかったように見受けられた。反して暴力夫の嘘の証言にそうそうと納得顔。こりゃもう一回フランス革命がないとこの国の男の目は覚めないなって感じ。それがまぁ50〜60年位でフランスの女性の地位はとんでもなく高くなっている。そこにはもちろん女性達の踏ん張り(マドレーヌも参加してたようだし)あってのものだろうけれど,男性の意識はどんな風に変化していったのだろう?そっちも興味がある。…がここではそこは触れない。

でもマドレーヌの起こした事件がこれがまぁ単なる傷害事件というよりちょっと猟奇的で…ここまでの内容に設定する必要があったのか?実話でこんなサンプルがあったら怖いわ。自分や息子を守る為でもそれは肯定はできないでしょ。でもマドレーヌは93歳になる今も後悔は見られない,むしろ過去の勲章のように捉えているのにはちょっと引くなぁ。それと引き換えに息子のマチューは決して幸せではない青年期を過ごし,ベトナムへ従軍記者として死へと向かっていってしまう。これはまさに因果応報。
これが人生なんだろう。プラスマイナスゼロって事なのか?

そして、たまたまタクシーに乗せただけのシャルルにいくら良くしてもらったとはいえ,101万ユーロ?1億5千万くらい?そんな大金を残す理由が弱いと思った。こんな棚ぼた、当たるわけのない宝くじに当たったような展開に私は酔えない。お金は天から降ってくるものじゃないし、ましてや恵んでもらってラッキーみたいな展開は…どうでしょうか?こんな夢見たいな話。
本当は歩くと汚いパリもタクシーから見えるパリは何のマジックかってくらいにとても美しい。灯が灯りそこに浮かび上がるパリの街は本当に素敵。夢の中で夢のような魔法をかけられたシャルル一家だけど、それで良いのかな?まぁこれは映画だからいいのか。
柊