このレビューはネタバレを含みます
パリを舞台にした好きな映画の1本になりました。パリの風景が印象的。
エタ・ジェイムス、ディナ・ワシントンの楽曲が効果的に使用されていた。
ストーリーが進む中、上品な老婦人の壮絶な過去を知り衝撃を受けた。
「人に優しく、自身の決断に責任を持ち正しく生きる」こと、この大切さを再認識しました。
♪使用楽曲のシンガー
『On the Sunny Side of the Street」
Dinah Washington(ディナ・ワシントン)
「At Last」
Etta James(エタ・ジェイムズ)
This Bitter Earth」
Dinah Washington(ディナ・ワシントン)
いい映画です!
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【シネマLog】『パリタクシー』 ー パリの街と共に綴る人間ドラマ
## 作品概要
- **映画タイトル**: パリタクシー (Une belle course / Paris Taxi)
- **監督名**: クリスチャン・カリオン (Christian Carion)
- **脚本家名**: シリル・ジェリー (Cyril Gély)
- **撮影監督名**: ピエール・コットロー (Pierre Cottereau)
- **製作者**: Jérome Seydoux, Olivier Delbosc(Pathe Films, Curiosa Films)
- **製作年次**: 2022年(フランス)
- **日本公開年次**: 未公開
- **音楽監督名**: フィリップ・ロンビ (Philippe Rombi)
- **主演俳優名**: リーヌ・ルノー (Line Renaud), ダニー・ブーン (Dany Boon)
## 監督素描
- **監督名**: クリスチャン・カリオン (Christian Carion)
- **生年月日**: 1963年1月4日
- **主な経歴**:
- 2001年: デビュー作『ミシェル・ヴォーレ、監禁』(The Girl from Paris) 、翌年以降に国際的高評価を得る。
- 2005年: 第一次世界大戦をテーマにした『戦場のアリア』(Joyeux Noël) がアカデミー賞外国語映画賞にノミネート。
- 2009年: スパイ映画『遠すぎた橋の記憶』(L'affaire Farewell) を監督。
- 2015年: 第二次世界大戦を背景にした『アンナとアントワーヌ』(En mai, fais ce qu'il te plaît) がヒット。
- **主な代表作**:
1. 戦場のアリア (Joyeux Noël)
2. アンナとアントワーヌ (En mai, fais ce qu'il te plaît)
3. 遠すぎた橋の記憶 (L'affaire Farewell)
4. パリタクシー (Une belle course)
## 印象的シーン
『パリタクシー』の最も印象的なシーンの一つは、人生の終盤を迎えた女性(リーヌ・ルノー)がタクシー運転手(ダニー・ブーン)と共にパリの思い出の地を巡るシークエンスです。特に、エッフェル塔を背景に彼女が過去の出来事を回想するシーンは、長回しのカメラワークが巧みに使われ、感傷的な音楽とともに観客の心を引き込んでいきます。パリの美しい街並みを背景に、タクシー内での静かな会話が物語の核心を形作り、登場人物たちの心情が自然に描かれています。
## この映画のトリビア
1. この映画は、リーヌ・ルノーが90歳を迎える直前に撮影されたもので、彼女の長いキャリアを振り返るような内容になっています。
2. 監督のクリスチャン・カリオンは、リーヌ・ルノーに「この役はあなたしかできない」と直談判し、出演を依頼した。
3. ダニー・ブーンとリーヌ・ルノーは以前にも共演しており、本作での再共演が多くのファンに期待されていました。
4. フィリップ・ロンビによる音楽は、本作で使用されたタクシーの旅路を象徴するものとして非常に高く評価されています。
## レビュー
『パリタクシー』は、パリを舞台に人生の黄昏時を迎えた老婦人と彼女を乗せたタクシー運転手との感動的な旅を描いた作品です。クリスチャン・カリオン監督は、戦争映画や歴史的題材を得意とする一方で、今回はより個人的で静かな人間ドラマに焦点を当てています。この作品では、パリの街が重要な背景として機能しつつ、登場人物の内面を映し出す鏡のような役割を果たします。
主人公の女性は、自分の人生を振り返りながら、タクシー運転手との会話を通して過去の決断や未練に思いを馳せます。リーヌ・ルノーの繊細で重厚な演技が、このキャラクターに深い感情を与え、彼女の言葉には生きること、失うこと、そして愛することの重みが宿ります。対するダニー・ブーン演じる運転手は、日常に埋もれた感情を抱えながらも、彼女との出会いによって少しずつ変化していく様子が描かれます。この二人の演技の化学反応は、映画全体にわたって観客を引き込む力があります。
映画のほとんどはタクシーの中で展開されますが、その狭い空間は、二人の人物が心を開き合い、人生の意味を見つめ直すための象徴的な場所となっています。クリスチャン・カリオンは、この限られた空間を活かし、タクシーという密閉された移動手段の中で、登場人物たちが共有する一瞬一瞬に詩的な価値を見出します。街を巡る中で、彼らの間に芽生える絆や共感が観客に伝わり、静かな感動を呼び起こします。
また、本作で描かれるパリの風景は単なる舞台装置にとどまらず、登場人物の感情の変化を映し出す大切な要素です。エッフェル塔やセーヌ川など、パリの象徴的な場所が物語に登場することで、観客は二人の旅に深く共感しながら、同時にパリという街自体が持つ独特の魅力も感じ取ることができます。
音楽も映画の雰囲気を一層引き立てています。フィリップ・ロンビの手がけるサウンドトラックは、静かでありながら感情豊かで、登場人物の心情をより深く掘り下げる役割を果たしています。ロンビの音楽は、人生の美しさと儚さを表現するかのように、映画の最後まで観客の心に寄り添います。
結論として、『パリタクシー』は、人間の人生の儚さと、それを共有することの価値を深く掘り下げた作品です。クリスチャン・カリオン監督は、これまでの戦争や歴史にまつわる大作とは異なるアプローチで、観る者に普遍的なテーマを問いかけます。映画を通じて描かれるのは、ただのタクシーの旅ではなく、人生そのものの旅であり、最後の瞬間まで大切なものを見つめ続けることの大切さを教えてくれます。
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