このレビューはネタバレを含みます
女性の権利や社会的な抑圧を真摯に描かれており対峙する姿勢を求められるような映画だった。
2025年から始まるトランプ政権下のアメリカに想いを馳せながら観た…
【シネマLog】「あのこと」— 静かなる激情の時代。
## 作品概要:
- 映画タイトル: あのこと (L'Événement)
- 監督名: オードレイ・ディワン (Audrey Diwan)
- 脚本家名: オードレイ・ディワン (Audrey Diwan)、マルシア・ロマノ (Marcia Romano)
- 撮影監督名: ローラン・タンジー (Laurent Tangy)
- 製作プロダクション名: レ・フィルム・ド・ランアール (Les Films du Losange)
- 製作年次: 2021年(フランス)
- 日本公開年次: 2022年
- 音楽監督名: ソフィア・アルムーリ (Sophie Alour)
- 主演俳優名: アナマリア・ヴァルトロメイ (Anamaria Vartolomei)、主な出演者: ルイーズ・オリニ (Luàna Bajrami)、ピオ・マルマイ (Pio Marmaï)
## 監督素描:
- 生年月日: 1980年3月31日
- 主な経歴:
- ジャーナリスト、脚本家として活躍
- 2021年に監督作『あのこと』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞
- 主な代表作:
- あのこと (L'Événement)
- シンプル・パッション (Passion Simple)
## 印象的シーン:
主人公アンヌが大学の廊下を歩きながら、内心の葛藤と未来への不安を抱える場面は特筆に値する。ローラン・タンジーの撮影は、長回しを多用してアンヌの孤独感を際立たせ、背景に映り込む淡い光が1960年代フランスの雰囲気を繊細に表現している。観客は彼女の視線を通して、社会的抑圧の影響を痛感するだろう。
## エピソード:
- 本作は、作家アニー・エルノーの自伝的小説を原作としている。
- オードレイ・ディワンは、実際に60年代の大学生に取材し、時代考証に細心の注意を払った。
- 主演のアナマリア・ヴァルトロメイは、本作での演技によりセザール賞有望若手女優賞を受賞。
## レビュー:
『あのこと』は、1960年代のフランスにおける中絶禁止の暗い影を背景に、若い女性アンヌの決断と孤独を描いた社会派ドラマである。ディワン監督は、物語を淡々と語りながらも、緊迫感を生み出すことに成功している。特筆すべきは主人公の心理描写だ。無駄を排した脚本と繊細な演技によって、観客はアンヌの内面に深く入り込むことができる。特に長回しのカメラワークは、観る者に彼女の苦悩を共有させるような効果を持つ。
また、映像全体に漂う時代性は、シンプルながらも重厚だ。画面に映る小道具、衣装、さらにはモノクロームに近い色調が、60年代の社会的背景を見事に体現している。さらに、音楽の使用も慎重で、静寂が場面を支配する瞬間が多い。これにより、アンヌの孤立感が増幅され、観客に重い余韻を残す。
『あのこと』は、女性の権利や社会的な抑圧を真摯に描きつつも、道徳的説教に陥らない。むしろ観客に問いを投げかけ、共感を求める映画だ。その誠実さと緊張感のある物語展開は、現代の映画界において極めて重要な意味を持つ。
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