とらキチ

インスペクション ここで生きるのとらキチのレビュー・感想・評価

3.9
性的嗜好から母親に棄てられホームレス生活を送ってきた青年フレンチがアメリカ海兵隊への入隊を志願し、新兵教育訓練課程(ブートキャンプ)に送られる。
海兵隊のモットー“Semper Fi(常に忠誠を)”をテーマにした作品。一般的には国家や部隊、上官に対してという解釈になるが、今作ではそれらに加えて仲間や家族、さらには他人に、といった周りの全てに対してアメリカ国民として“忠誠たれ”と、そうすれば例えマイノリティであってもリスペクトされる、という事になるのではないか。海兵隊在職中に映像記録担当だったエレガンス・ブラットン監督による、ある意味アメリカ海兵隊のリクルート、PRのような映画。
また、自らの居場所やアイデンティティーを探し求める物語。海兵隊には“Once a Marine, Always a Marine.(一度マリーンになれば、一生マリーンだ)”という標語もあって、そこには白人も黒人も、ゲイもストレートも、クリスチャンもムスリムも関係なく、ブートキャンプを乗り越え修了し、海兵隊員(マリーン)として認められれば皆一生の仲間なのだという事が込められている。
厳しい訓練に耐え抜き、晴れて“マリーン”となったフレンチ。だが物語の冒頭とラストに於いて“人間、どうしても譲れないし、絶対に変われないものもある…”という事が語られる。その語り口が実に強烈であった。
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