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ヴィーガンズ・ハムの役人者のレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
3.4
神戸牛、イベリコ豚に続くブランド、フレンチヴィーガンの映画。倫理観のネジがぶっ飛んだネタの数々が、いかにもフレンチブラックコメディ。どこまで笑いとして許容されるかは、人によって国によって大きく変わりそう。子羊が人間の子供のようになっていく「LAMB」と対照的に、人が食肉用の家畜になっていく。家畜を擬人化するのとは逆に、人を擬家畜化することによって、人が家畜または獲物と同じ土俵に引っ張り出される。ヴィーガンを狩るバーサーカーと化した主人公が、野生に還ってハンティングを極めるシーンが笑えた。カニバリズムというとそんな野蛮なイメージがある一方、この映画の主人公は肉屋ならではのこだわりと審美眼で、道行くヴィーガンに対して、ブランド牛の等級のようなラベリングをしていく。パッと見では分からない食肉としての価値も、隠された個性の一つと言えるのかもしれない。人がさばかれ加工されていく様子が、グロくて無理ーと最初は思ってたけど、慣れていくうちに、人間も結局は牛や豚と同じ肉なんだよなーと思えてくる。極限まで分解することによる本質への回帰、そして万物の同質化を表しているに違いない。人類補完計画か。それにしても、みんな人肉の虜になり過ぎ。人肉食が禁止されているのはそれが美味し過ぎるからだ、という都市伝説を思い出した。
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