役人者

ショーシャンクの空にの役人者のネタバレレビュー・内容・結末

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

フォレスト・ガンプに負けて、アカデミー賞無冠に終わった本作が、数々のアカデミー賞受賞作を凌いで、多くの映画好きのオールタイムベストとして君臨することになる。主人公アンディと同じく、この映画自体が敗者達の中で輝く希望の星。公開当初そんな話題になった記憶はないけど、レンタル解禁されてからじわじわ浸透していった印象。レンタルビデオが衰退していく一方で、口コミの影響力が幅を効かせてる今の時代に公開されてたら、色々結果は違っていたのかも。
刑務所という特殊な閉鎖社会を舞台としていながら、多くの人が心を重ねられる脚本や人物描写に、何度観ても心を鷲掴まれる。覚えのない罪を背負って、多種多様な罪人のるつぼに放り込まれるも、飄々とした仮面の下で決して希望を捨てなかったアンディ。その希望が、過ぎる年月とともに、レッドを始めとした囚人達の中に浸透していく。刑務所の中の人間模様に、一般社会の有様、ひいてはキリスト教的観念を投影しているよう。特に、語り手であるレッドが、アンディの残した希望の跡を辿って、自由な世界へと踏み出す流れが感動的。
本作はまた、刑務所というシステムに対する、皮肉と反骨精神を宿している。それは、そこに投影された、一般社会やキリスト教に向けられたものでもあるのかもしれない。塀の外では真面目な銀行員だったアンディが、収監されたことをきっかけに不正に手を染め、挙句ショーシャンクのカリスマ囚人として、刑務所カーストの頂点へ上り詰めていく。アンディの捨て身の賭けによって、屋上で囚人達にビールが振る舞われるシーンや、所長室に立てこもって館内放送をジャックするシーンが、爽快に沁みる。塀の中なのになんか青春してる。善悪の意味があべこべになった世界で巻き起こる、シニカルなコメディにすら見えてくる。もし、アンディが真犯人だとすると、その見方も更に逆転してしまうのだけれど。
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